23_山梨県甲斐市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.23
申請日:2021年7月9日
申請/実施責任者:甲斐市 環境課
場所:山梨県甲斐市
居住者: 当事者本人(57歳、女)、母(86歳、母、現在はショートステイに入所の為不在)
居住環境:持ち家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:30頭
手術日:8月15日、8月19日
協力病院:ふー動物病院山梨分院
チケット発行数:17枚(13頭は当事者にて手術済み)
手術頭数:13頭(1頭は脱走、1頭は捕獲できず、2頭はチケット発行前に当事者負担で手術済み)
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 隣の家の猫と野良猫との間に生まれた3頭の子猫が当事者の敷地にも入ってきた。子猫が、網戸によじ登って離れなくなり、餌を与えてしまったのが始まり。
- 5年前に県動物愛護指導センター、市役所、ボランティア団体が当事者宅を訪問。愛護センターより「外の猫を家の中に入れるように」と指導されたため、家の中に入れるようになった。
- 当時、当事者の母親が触れる猫については1年に2頭ほどのペースで手術をしていたようであったが、全頭には至らず徐々に増えていった。
- 当事者の母親は元々猫好きで手厚く猫の世話をしていたが、認知症が進み、猫たちへの愛情は変わらないものの行き届いた世話をすることができない状態となった。
- 2020年11月に母親が倒れ、母親の手伝い程度であった当事者が世話をすることとなったが、猫の飼い方等の知識もなく子猫が増えてしまい、以前協力してもらったボランティア団体に連絡を取り多頭飼育崩壊が発覚。
- 使用したチケットは17枚中13枚。2頭はチケット発行後に当事者負担で手術済み、1頭は脱走してしまい、1頭は捕獲できなかった。
- 全頭が当事者宅に戻ったが、できるだけ譲渡を進める予定である(3頭は既に譲渡予定あり)。
- 母親の年金で生活していたため、母親が入院した今は生活の見通しが立っていない。仕事が見つからない場合は、家を売却して生活保護を受給することも考えられるが、猫との生活は続くと思われる。
- 今後は、体調を整えて仕事を探し、行政の支援を受けながら猫との安定した生活を目指していく。
- 捕獲できなかった成猫1頭とチケット申請後に生まれた仔猫8頭の合計9頭が未手術となったため2度目の申請を検討中。※子猫8頭は譲渡ができれば譲渡先にて手術予定。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
8月5日 | 2 | 3 | 0 | 5 |
8月19日 | 1 | 7 | 0 | 8 |
計 | 3 | 10 | 0 | 13 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
猫の譲渡が思うように進んでいないが、支援後は多少当事者の意識変化がみてとれる。
地域には手術のため餌やりをやめていただくチラシを配布し、個人ボランティアが連日通ったが、全頭手術を達成できなかった。やはり、当事者と地域の餌やりさんの全面的協力を得られないと外猫の捕獲が厳しいことを実感した。
当事者には、現状を受け入れてもらうように根気よく説得。話だけでは理解してもらえず、最終的には捕獲をお願いすることで、簡単に捕獲できない難しさを体感してもらった。猫の出産が続いたこともあって、本当の危機感や当事者意識が芽生えたようだ。この「当事者に納得してもらう事」に予想外に時間を費やしたことで捕獲が計画通りに進まなかった。
どうぶつ基金スタッフコメント
支援前の写真を見ると家の中は清潔に保たれており、多頭飼育崩壊と聞いてイメージしがちな不衛生な環境ではないことが分かります。もともとは母親が集めてしまった猫で、母親が健在だった頃はお世話も行き届いていたのではないでしょうか。突然、30頭もの猫のお世話を引き継ぐことになった当事者の戸惑いは分からないでもありません。
また、行政の報告によると、5年前に動物愛護センターが母親に対し「外の猫を家の中に入れるように」指導したとあります。未手術の猫を含めて家の中に入れたらどうなるか、誰でも簡単に想像ができます。
なぜそのような指導に至ったのか今となっては分かりませんが、最近、猫に餌をやっている=飼い主だと決めつけて誤った指導が行われている例をよく耳にします。そのことが多頭飼育崩壊を生み出す原因の一つにもなっているのです。
「あなたが餌をやっている猫はあなたの飼い猫だ」と決めつけ、責任問題をちらつかせて対応を迫る。そのような意味のない、状況を悪化させるだけの指導はもう止めませんか?