76_長野県佐久穂町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.76
申請日:2021年2月1日
申請/実施責任者:佐久穂町役場 住民税務課 生活環境係
場所:長野県南佐久郡佐久穂町
居住者:当事者本人(53歳、女、無職)、父(87歳、無職)、母(85歳、無職)、姉(58歳、無職)
居住環境:持ち家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:33頭
手術日:3月3日、4日
協力病院:しんけん動物病院
チケット発行数:27枚(手術済み6頭を除く27頭分を申請)
手術頭数:26頭(手術当日、体調不良で1頭が手術できず)
協働ボランティア名:1匹でも犬、ねこを救う会
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 飼い始めたのは10年ほど前。地域に猫が多く、迷い込んだ猫や状態の悪い猫を不憫に思い、餌をあげたり自宅内で保護したりしていた。
- 近くに保育園や小学校があって猫が遺棄されることが多く、当事者が面倒を見ることになってしまった猫も多い。自力で不妊手術もしていたが追いつかなくなってしまった。
- 家族が知り合いに相談→知り合いが動物病院に相談→動物病院が保健所に相談→保健所から市町村に情報共有があり多頭飼育状態を把握。その後、不妊手術の実施や飼育環境改善のための助言(臭い、家族の生活を脅かさないような飼育方法)の指導を行った。
- 当事者は精神の不調によって退職後長らく仕事をしておらず、手術費用の負担が難しい。くわえて、地域に生息する猫の数が多く(ロードキル頭数も多い)、地域の猫が流入している状況で近所から苦情が出ていること、多頭飼育状態の自宅で同居する家族が精神的・肉体的に限界を迎えており、切実なSOSであることなどを考慮して多頭飼育救済支援を申請することを決定。
- 手術当日、体調不良により手術ができなかった1頭を除く32頭が手術済みとなった。未手術の1頭について、今後の手術予定は未定である。
- 部屋にある物を片付けて清掃を行い、不要な物を廃棄するなどして、家人の持ち物や缶詰・フードを整理した。埃を取り除いて拭き掃除を行ったことで臭いも軽減された。
- 不妊手術を行ったことで繁殖行動によるストレスが軽減されたほか、室内が広く清潔になり、のびのびとしている様子が見受けられる。トイレも設置された。
- 33頭は今後も当事者が飼育を継続する。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
3月3日 | 6 | 7 | 0 | 13 |
3月4日 | 5 | 8 | 0 | 13 |
計 | 11 | 15 | 0 | 26 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
今回初めて、どうぶつ基金の多頭飼育救済支援事業を利用させていただきましたが、当事者としてはどうしようもない状態で悲痛なSOSだったため、とても感謝しています。
地域に猫が多い状態で陥ってしまった多頭飼育状態のため、地域住民でボランティアしていただける方への橋渡しや問題提起も行い、引き続き地域も併せた見守りや取り組みが必要だと感じました。
当事者宅は不要な物が多く清掃が行き届かない状態になっており、不用物品の廃棄と不衛生な敷物、段ボールなどを撤去して清掃を行ったことで、埃や臭いが軽減され、清潔になった環境で猫たちがくつろげるようになりました。
どうぶつ基金スタッフコメント
繁殖に歯止めをかけられず、多頭飼育崩壊状態にしてしまった当事者に責任があることは明らかですが、捨てられて行き場のない猫、飼い主がおらず状態の悪い猫を不憫に思って餌をあげる、自宅で保護するといったこと自体は悪いことではありません。それは人間が持つごく自然な感情ではないでしょうか。
今回、行政は「地域も併せた見守りや取り組みが必要だと感じた」との感想を寄せていますが、確かに、当事者宅周辺にいる野良猫たちのTNRが進んでいたら少し違う結果になっていたかもしれません。本案件は一定の解決をみることができましたが、現場には未手術の猫が1頭、室内外を行き来できる状態で残っています。まずはこの1頭の手術を急ぐこと、そして、できることなら周辺地域のTNRを急いで進めること。それがこのような事態を二度と引き起こさない最善で唯一の方法です。