28_秋田県八峰町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.28
申請日:2023年7月13日
申請/実施責任者:八峰町役場 総務課
場所:秋田県山本郡八峰町
居住者:当事者本人(70歳、女性、パート)
居住環境:持ち家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:61頭(40頭で申請するも実際は61頭であった)
手術日:8月24日、8月26日、9月7日
協力病院:木村いぬねこ病院/八戸のらねこ病院
チケット発行数:60枚
手術頭数:30頭(31頭は協働ボランティア団体の費用負担により手術済み)
協働ボランティア:能代さくら猫サポーターズクラブ
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 約10年前、配偶者(すでに他界)に障がいがあったこともあり、気を紛らわすために1頭の野良猫を保護し飼い始めた。
- 基本的には家の中で飼育していたが、発情期など隙をついて屋外に出てしまうことがあり、未手術だったので子猫が生まれて頭数が増え、徐々に手におえなくなり60頭近くにまで増えてしまった。実家(多頭飼育現場)は猫が増えすぎてしまい、当事者が居住することができなくなってしまったため、近くの町営住宅に引っ越した。以前はエサも毎日与えていたが、猫の頭数が増えると同時に当事者自身の足腰も悪くなり、現在は木曜日の朝と日曜日の夕方くらいのペースでしか与えられていなかった。
- 動物愛護ボランティアが自身の仕事で現場周辺を訪れたときに多頭飼育を発見し、当事者へ注意喚起を行ったものの改善が見られないため、役場へ情報提供し発覚した。
- 糞などが散乱している状況であったほか、エサも十分に与えられていないため、飼育環境の改善、新たな飼い主を探すことや保健所へ引き渡す際に、身内又は親族へ協力をお願いするよう指導した。
- 当事者本人は体力面や金銭面での対応が不可能と思われるほか、多頭飼育現場が個人宅ということもあり、行政だけで対応ができなかった。また、補正予算を組む時間的な余裕もなく、今回は協働ボランティア団体の協力を得ることができたため、多頭飼育救済の申請を決定した。
- 申請当初は40頭で申請があったが、現場での捕獲が困難であったり隠れていた猫がおり、その後の確認で60頭と判明し60頭分のチケットを申請した。
- チケットを使用して30頭を手術済み、残り30頭と隠れていて新たに見つかった猫1頭を含めた31頭は協働ボランティア団体の費用負担にて手術済み。手術後は全頭ボランティア団体で保護され、衛生環境や健康状態も改善されている。体調の変化も注意深く観察し、猫たちの状況を見極めながら譲渡先を探していく。
- 多頭飼育現場は、今後片付けを行ったのち解体も視野に入れている。手術後、半数近くの成猫が中高齢であったり病気があったため、今後の医療費等の資金確保に苦慮する可能性も考えられることを見据え、協働ボランティア団体の費用負担により終生飼養を行っているNPO法人にうち29頭が引き取られた。残り32頭については協働ボランティア団体で里親探しを行っていく。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
8月24日 | 4 | 0 | 0 | 4 |
8月26日 | 3 | 17 | 0 | 20 |
9月7日 | 6 | 0 | 0 | 6 |
計 | 13 | 17 | 0 | 30 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
申請が初めてということもあり、行政が主導して協働ボランティア団体をコントロールできなかった。
どうぶつ基金スタッフコメント
申請当時、当事者が飼育場所とは別の場所に居住、給餌は週2回のみというネグレクト状態でした。動物虐待といえる状況です。飼育し始めたきっかけも「気を紛らわすため」、繁殖制限もせず自分だけが引っ越し、餌もろくに与えない。当事者はあまりに無責任です。
今回、事態が発覚し支援が行われたことで猫は全頭手術済み(31頭はボランティア団体が費用を負担)となり、すべてボランティア団体に保護されました。飼育環境は大きく改善し、32頭の猫については行政と協働した団体のもとで譲渡先探しが行われます。
残る29頭については、行政と協働した団体から別の団体へ二次譲渡が行われていました。どうぶつ基金では、支援した犬や猫がボランティア団体に保護される場合、必ず飼育環境を確認しています。二次譲渡される場合も同様で、二次譲渡先の団体についても飼育環境を確認しています。ただ、今回は二次譲渡について事後報告であったこと、二次譲渡先の団体が飼育環境を公開していないことから確認ができませんでした。二次譲渡は可能性が広がる反面、二次崩壊など大きな問題もはらんでいます。実際に悲劇が起こっていることを考えれば、ボランティア同士の引き渡しであっても飼育環境の確認は絶対に必要です。辛い環境から救い出された子たちだからこそ、その先でネグレクトや二次崩壊が起こるようなことは許されません。