61_和歌山県かつらぎ町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.61
申請日:2023年11月16日
申請/実施責任者:かつらぎ町役場 環境課
場所:和歌山県伊都郡かつらぎ町
居住者:当事者本人(68歳、女、パート)
居住環境:持ち家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:30頭
手術日:1月22日、1月23日
協力病院:北摂TNRサポート のらねこさんの手術
チケット発行数:30枚
手術頭数:30頭
協働ボランティア:はしもとさくら猫の会和歌にゃんず
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 2020年春ごろ、迷いこんできた野良猫1頭に餌を与えた。
- その後も餌を求めてやってくるようになり、かわいそうに思い餌や水を与えていたら住み着くようになった。餌を与えているうちに他の猫も寄ってくるようになり、不妊手術を行っていなかったため頭数が増えた。
- 当事者の職場の友人から相談があり多頭飼育が発覚。生活上の衛生面等の指導、地域住民への影響やさくらねこ活動の説明をした。
- 当事者は一人暮らしで収入面では年金とパートの収入のみ。生活は年金でなんとかできているが、パートの収入が猫の餌代でなくなってしまうため、経済的に苦しい状況である。
- 家の中は猫の糞尿等で汚れ、臭いもきつく、とても衛生的な生活ができる状況ではない。また臭いが酷いため、年中窓を開けておく必要があり寒暖の厳しい中で生活を行っている。猫だけでなく、当事者もこのままではいつ病気になるかわからない状況であるため、多頭飼育救済の申請を決定した。
- 30頭すべて手術済みとなり、全頭は当事者宅へ戻った。当事者と猫は今後も同じ場所に住み続ける。
- 糞については取り除き、生活習慣や衛生環境を改善していけるよう居住空間を清掃した。手術後の猫の健康状態は良好である。決まった時間に餌をあげ、飼育かごの設置、おしっこの砂場の設置、おしっこシートの交換をこまめに行うようにしている。使っていなかった2階の部屋を猫用として使用することになった。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
1月22日 | 8 | 11 | 1 | 20 |
1月23日 | 7 | 3 | 0 | 10 |
計 | 15 | 14 | 1 | 30 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
初めての多頭飼育救済ということもあり、不安であったが、ボランティア団体の協力のおかげで、非常にスムーズに捕獲できた。また、予定していた頭数すべてを捕獲しさくらねこにすることができました。
どうぶつ基金スタッフコメント
30頭の猫はすべて手術済みとなり、当事者が新たな猫を迎え入れないかぎり増えることはありません。当事者もほっとしているのではないでしょうか。今回の支援が解決に向けた一歩となり、当事者と猫の暮らしが不安のない穏やかなものになることを願っています。
本件のように、野良猫への餌やりから多頭飼育崩壊につながるケースは少なくありません。最初は野良猫に餌をやっていただけの当事者が、いつどのように「飼い主」であると自覚するのかいつも疑問に感じています。もちろん、当事者自らがあるタイミングで「この子たちは自分の飼い猫だ」と自発的に思うこともあるでしょう。しかしながら、周囲の「餌をやっているなら飼っているのと同じ」という圧力によって「飼い主」にされることが実際にあります。
本件はそのケースではありませんが、こういった “責任の押し付け” は全国で数多くおきています。本来、野良猫は「飼い主のいない猫」であり、その解決は行政が行うべきです。餌をやっている人に責任を押し付ける、それが多頭飼育崩壊の発生原因となっていることを多くの方に知っていただきたいと思います。