56_富山県富山市多頭飼育救済支援レポート(行政枠) 

申請No.56
申請日:2023年10月27日
申請/実施責任者:富山市保健所 生活衛生課
場所:富山県 富山市
居住者:当事者本人(60歳、女、接客業)
居住環境:持ち家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:58頭(当初50頭で申請したが実際は58頭であった)
手術日:11月13日、11月14日、11月15日
協力病院:滑川さくらねこ動物病院
チケット発行数:60枚
手術頭数:58頭
協働ボランティア:個人ボランティア

申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)

  1. 10年前、知人から3頭の猫を譲り受けた。
  2. 不妊手術をしていなかったことから猫がどんどん増えていき、3年前に当事者の母が亡くなってから、より一層家が荒れていった。壁の一部を破損したが修繕できなかったため、そこから外猫が家の中に入り込み繁殖し、一層猫が増えていった。
  3. 近隣住民より「町内の一人暮らしの女性が猫を飼っているが、適正に飼養されているかわからない。悪臭がしており近所の人も何もできない状態が続いている」との相談があった。訪問し「相談に乗る」旨の手紙を投函すると後日、当事者より「猫が増えすぎて困っている」と相談があり多頭飼育が発覚。
  4. 当事者負担による不妊手術をすすめる。その際、病院の紹介、猫の捕獲と病院への搬送に協力できるボランティアの紹介、保健所による術後の一時預かりなどを申し出た。
  5. 当事者の最大限の範囲の経済力で一部の猫の不妊手術を行いたい旨の申し出があったが、当事者の困窮度と事態打開への最大限の努力への考慮および再発防止の観点から制度を活用した全頭手術が望ましいと判断し申請に至る。
  6. 当初は50頭と見込んでいたが、申請後すぐに未捕獲の猫がいること、未確認ではあるが屋根裏等に猫が潜んでいる可能性があることが判明し、実際の総数を60頭として支援を行った。
  7. 実際は58頭の猫がおり、その全頭をチケットにより手術した。2頭はボランティアに保護されたが。残る56頭は当事者宅でそのまま暮らす。
  8. 当事者なりに頑張って清掃しているが一般的にはまだ汚い。保健所とボランティアで一部の清掃を行ったが、トイレの設置までには至っていない。運動スペースはもとから充分あり、破損していた家の一部も保健所とボランティアで補修したため、屋外との出入りはなくなった。猫の健康状態については特に変化はない。
手術日 オス メス 耳カットのみ
11月13日 5 15 0 20
11月14日 4 13 0 17
11月15日 11 10 0 21
20 38 0 58

【現場写真(支援前)】

【現場写真(支援後)】

今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
富山市は施設も予算規模も人員も小さい組織である。今回は猫の総数が58頭に及び過去最大規模の案件となった。保健所ではそれだけの頭数を預かれないので、ボランティアが所有している物件を借り受け、そこで保健所の職員が術後の管理を行うこととなった。また、ケージをはじめとする飼養に必要な物品も保健所で所有しているものだけでは不足したので、県内の複数のボランティアが所有するケージ等を集めて事業を実施した。結果、3日ですべての猫の手術が完了した。保健所での対応で不足した部分でボランティアの力を借りることにより、施設規模以上の事業を行えた事例は今後に向けて大きな自信となった。また、本事例はどうぶつ基金による支援がなければ解決できなかった事例であり、どうぶつ基金及び寄付者に深く感謝の意を表したいと思う。
最後に、当事者からのお礼のメッセージを引用したい。
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先ほど猫たちが帰って参りました。今回のことでは本当にたくさんの皆さまにお世話になりました。ありがとうございました。私1人ではどうすることも出来ませんでした。感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも困っている人の力になりたいと思います。


どうぶつ基金スタッフコメント
本件における富山市の対応は、事前の指導も含め他の行政にぜひ参考にしていただきたいと感じました。日頃から病院や民間ボランティアとの連携がとれているのだなと思います。50頭を超える規模でしたが、3日間という短期間で全頭の手術を終えることができたのも、この強固な連携の成果ではないでしょうか。行政と民間はいがみ合うものではなく、手を携える関係であるべきです。そのことを本件を通じて実感しました。
トイレの設置など飼育環境の改善にまだ課題はありますが、今回の支援は解決に向けた大きな一歩となりました。当事者はメッセージに込めた感謝の気持ちを忘れることなく、そしてこの支援を決して無駄にすることのないよう最大限の努力をしてほしいと思います。行政には、支援後も当事者と継続して関わり、適正飼養の実現に向けてさらなる指導と見守りを行っていただくよう願います。


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