“餌やり禁止条項”は必要か?条例案の問題点について沖縄県とどうぶつ基金が意見交換
~人と猫が共生できる町づくりに向けてTNRの火を消さないために~
沖縄県と犬や猫の殺処分ゼロの実現を目指す公益財団法人どうぶつ基金(所在地:兵庫県芦屋市、理事長:佐上邦久)は、2024年2月14日、沖縄県が制定を目指す「沖縄県動物愛護及び管理に関する条例(案)」のいわゆる “餌やり禁止条項”に関する意見交換を行いました。
どうぶつ基金が署名活動を展開し、要望書と28,480筆の署名を提出していた「沖縄県動物愛護及び管理に関する条例(案)」から第13条(餌やり禁止条項)の削除を求めていた件については、2月議会への提出は見送られましたが、沖縄県として条例の制定を目指す方向は変わっていません。
※本署名活動に関する詳細はこちら
https://www.change.org/OkinawaNeko
2024年2月14日、沖縄県環境部自然保護課の職員2名が兵庫県芦屋市のどうぶつ基金本部を来訪され、いわゆる “餌やり禁止条項”に関する意見交換を行いました。
まず、沖縄県より2月議会に提出予定であった以下の条文が示されました。この最終案はパブリックコメントや地元ボランティア団体との協議を経て修正されたものです。
【最終案 (2024年1月31日) ※議会に提出予定であった内容】
第 10 条 所有者又は占有者を確知することができない猫に給餌及び給水(以下「給餌等」という。)を行う者は、生殖を不能にする手術を施した又は施すことを予定している猫その他規則で定める猫を対象として、容器を用いて給餌等を行うものとし、給餌等を行った後は速やかに飼料等を回収するものとするほか、周辺住民の生活環境に支障を生じさせることがないようにこれを行わなけれはならない。
どうぶつ基金からは、
- 野良猫が増える原因を作った犯人は猫に餌をあげた人ではない。飼い猫を捨てたり、外を徘徊させ繁殖させた「無責任な飼い主」に原因があることは明らかである。
- 沖縄県は「無責任な餌やり」という言葉を多用するが、そもそもお腹をすかせた可哀想な野良猫に餌を与える行為は動愛法に基づいた行為であり、そこには何の責任(不妊手術をすること等)も伴わない。
という点を伝え、以下を沖縄県に提案しました。
【どうぶつ基金の提案】
最終案では、いわゆる「餌やりさん」に自己負担で不妊手術を求める内容となっており、住民同士の対立や「餌やりさん」へのいじめを招く懸念がある。新たな案においては、第10条(最終案)の内容を訂正し、以下内容を盛り込んだ条文を追加してはどうか。
●第10条(最終案)訂正案
第 10 条 所有者又は占有者を確知することができない猫に給餌及び給水(以下「給餌等」という。)を行う者は、容器を用いて給餌等を行うものとし、給餌等を行った後は速やかに飼料等を回収するものとするほか、周辺住民の生活環境に支障を生じさせることがないようにこれを行わなけれはならない。
●以下内容を盛り込んだ条文の追加
- 市民は未手術の猫を見かけたら行政に報告する。県の動物愛護センターやどうぶつ基金さくらねこ無料不妊手術事業の制度を利用すれば、無料で不妊手術が受けられるので、ボランティアと協力してTNRを進める。
- 無責任な飼い主に対して厳しく対応する。ただし、屋内飼養の徹底は沖縄という風土や県民性から実現不可能と考えるため努力目標程度にとどめる。飼い主による飼い猫のマイクロチップ登録と不妊手術の義務化を徹底し、繁殖を望むものは登録許可制にするような仕組みづくりを構築する。
- 不妊手術予定の野良猫と不妊手術の予定がない野良猫の区別をすることは不可能である。また、どちらの猫も愛護動物であり守られるべき存在である。よって「不妊手術済みまたは予定の猫」と「不妊手術予定のない猫」を区別して、餌やりの可否を判断すべきではない。
意見交換は2時間にわたって行われ、非常に有意義な時間となりました。沖縄県もどうぶつ基金も「野良猫に関連して起きる問題を解決したい」という同じ目標を共有しています。その目標達成のためにより良い制度設計ができるよう、どうぶつ基金は今後も沖縄県と話し合いを続けていきたいと考えています。
※今回の意見交換会の議事録はこちらからご確認いただけます。
https://www.doubutukikin.or.jp/wp-content/uploads/2023/04/4f1eee385b6758955fa8776cb8e3ec1e.pdf