なぜ離島に住む猫を殺処分することが生物多様性の保持につながらないか?

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「世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」

※どうぶつ基金ではAnimals24-7の許可のもと記事の翻訳を掲載しています。

Why killing cats on remote islands will not help biodiversity原文

 

なぜ離島に住む猫を殺処分することが生物多様性の保持につながらないか?

そして、なぜ犬、クマネズミ、豚、ヤギ、ハツカネズミ、マングースを殺すことが駆除業者にとっての主な仕事になっているのか?

創設から25年経つ、これまであまりパッとしなかった島嶼保全協会という組織が、生物多様性を増進するという名目の下、34か国の少なくとも107島で猫、犬、クマネズミ、豚、ヤギ、ハツカネズミ、マングースを殺処分するための資金を集めるアピールをしたところ、2019年3月27日時点でこれまでの2倍の金額を記録するという大成功を収めた。【サンタクルーズ、カリフォルニア】

第1に、アピールの考え方を示した論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」がオンラインジャーナル『POLSワン』に公共科学ライブラリーによって発表された。この論文は、少なくとも何名かの著者に経済的利益を与えるような、本当は仕事を得るための金銭目的の議論に対して、科学というお墨付きを与えている。もちろん、その議論は根拠薄弱だが。

 

恐ろしい戦術

第2に、『POLSワン』掲載の論文は要約され、たとえば、「絶滅を防ぐために猫を駆除すべきか?」などの見出しを付けてマスメディアによって世界中に拡散された。このバージョンの見出しはBBCニュースのヘレン・ブリッグスのものである。

このような見出しは、19世紀以来、何世代にもわたって猫が嫌いな愛鳥家が続けてきた議論と同じ体裁を論文に与えている。つまり、猫など何種かの動物がとりわけ希少鳥類などの生物多様性を危機に陥れているという主張である。

この議論によってアメリカ鳥類管理協会などの組織が長いこと資金を得てきている。それは、猫を守るか猫を排除するかという態度をまだ決めていない人々に効果的に作用するので、実に恐ろしい戦術なのである。とりわけ、ベストセラー本によって流布された、私たちが地球の「第6絶滅期」にいるという観念が通行手形になっており、しかも、気候変動否定論者を除けばマスコミからも否定されていない現代ではそうである。

 

最初の前提から間違っている

しかしながら、昆虫学者E. O. ウィルソンによって1997年に広められた「第6絶滅期」仮説は、全面的に数学モデルに基づいているのだが、使われているデータはもはやすっかり大昔のものになっている。

彼の著書から22年以上が過ぎた現在、取り上げられた種の生息数は指数関数的に増加している。また、絶滅したと思われていた種の数も、再発見などでずいぶん低く見積もられるようになってきた。そして、海洋や南半球の人気のある大型動物の数が減少しているという認識が流布しているにも関わらず、本来その土地にいなかった種の数まで入れれば、生物多様性はすべての大陸で、差し引きで改善しているのである。

ほとんどの生息域において、どちらが多数派ということになるであろうか。

 

責任回避的な経済論議

これまでの数十年、危機に瀕した種を守り、想定される「第6絶滅期」を防ぐために何かをするということに本当に反対する人は、「第6絶滅期」が始まりつつあるのだという根拠薄弱な議論を拒否するとか、進められている対処に効果がないと言うとか、そういうことをしてきたわけではなかった。そうではなくて、規制を必死で逃れようとする環境破壊企業が推し進めた、目先の利益の費用対効果の分析に責任回避の根拠を求めてきたのである。

これらの議論は本質的に責任回避的なものなので、危機に瀕した種を守るための、反論も多いアプローチを攻撃しようとする。彼らの議論は常に経済的利害という文脈で提起されるのだが、その理屈は、仄かに見えつつある破局を防ぐために即座に抜本的な手法をとるべきだという議論に何か道徳的な力を与えるようにも見えるのである。たとえ、その抜本的な手法なるものが全く何も成し遂げないものであるとしても。

 

隠された私利私欲

その一方で、声高に訴えられている「絶滅の危機」に急いで対処する必要があるという考えは、人々、あるいは組織が抜本的な対策なるものを推し進めることが、否応なく重要な経済的利害に関わってしまうのだという現実を曖昧にしてしまう。希少種を守ることはそれ自体巨大ビジネスなのだ。数十億ドルの金が動き、数万人の雇用が生み出される。

島に住む猫、犬、クマネズミ、豚、ヤギ、マングースを可能なあらゆる方法で殺処分することは、その方法がどれほど環境破壊的なものであろうと、彼らの言う抜本的な対策とされる。たくさんの技術者や科学者が雇用される。だが、殺処分が行われた特定生息地の生物多様性を守るための手段と言っても、本当に熟慮されたやり方では決してない。

 

ニュージーランド

一つの事例がニュージーランドの森林で現在行われている駆除剤コンパウンド1080の集中散布である。これは「外来捕食者」の国家的戦いの一環であり、「もともとそこにいなかった」ポッサム、猫、クマネズミ、ウサギなどの哺乳類を絶滅させて「在来の」鳥類を守るというのだから、実際は生物多様性を低下させることになるものである。

しかしながら、すべての哺乳類が処分の対象とされているのではない。家畜や狩猟者が好む有蹄類はそれらの鳥類生息域への影響がどれほど大きくても除外されるはずである。

しかし、一つのカテゴリーだけの動物を絶滅させることは実際には無理である。広い作用を持つ駆除剤を大量に散布すれば、必ずや他の動物にも破局的な被害を与えるからである。

 

対象でない鹿の98%が殺された

ニュージーランド鹿猟師協会が2019年3月21日に委託した調査で、ニュージーランド環境保全局から聞き出したところによれば、モールスワース・ステーションという高地農場で2017年10月にコンパウンド1080の散布が行われ、対象とされていない鹿の97%にあたる4,000頭余りが殺されてしまった。

ニュージーランド環境保全局は300頭の野生化したヒマラヤタールを殺処分するこの計画を、タールが本来の居住地で絶滅危機に瀕した種であるにもかかわらず躊躇なく認めた。キーという死肉を食べる在来種のオウムに餌を与えるためだった。この背景にあったのは、コンパウンド1080の最初期の散布でウォータールーの背後の丘にいたキーの本来の獲物が枯渇していたという事実である。

皮肉なことだが、そもそもキーが希少種になったのは、農民が羊の捕食者としてキーを駆除したからであった。ニュージーランド政府は当時、農民がキーを殺すことに補助金を与えていたのである。

 

彼らの論文の主要論点はかえって裏目に出るかもしれない

論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」には14人が共著者として名前を連ねている。

環境保全局広報のサリー・エスポジトによれば、さらに「40を超える機関の50名の著者がこの論文の出版に寄与している」という。

論文は長く、『POLSワン』上のものでは6,194単語に及ぶ。しかし、14人全員が本当に共著者ならば、一人当たりの貢献は半ページ程ということだ。50人の貢献があるならば、一人当たりで1段落しか書いていないということになるだろう。

この状況にもかかわらず、論文への参加者の誰一人として、それが議論なく受け入れられたとしても、彼らの主要論点がひっくり返ったり、彼らが意図する駆除への資金集めのキャンペーンに反対する理由として引用されたりさえすることに気付いていないようである。

 

絶滅の75%が島嶼部で起きている?

論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」のほとんどの部分は、残念ながら、ダンプトラックからガラガラと砂利を降ろすような感じの文章で書かれていて流暢というには程遠い。それにもかかわらず、エスポジト広報担当は彼女のメディア向け会見で、論文のなかの雑音めいた文章を一応の英語に翻訳する、なかなかよい仕事をしたと言えるだろう。

彼女は、論文をまとめる仕事が「環境保全局、および、カリフォルニア大学サンタクルーズ校沿岸環境保全行動研究所、国際鳥類研究所、自然生物絶滅防止のための国際連盟外来生物専門グループに所属する保全生物学者によってなされました」と言っている。

エスポジトは論点をまとめている。「世界には約465,000の島々があります。しかし、それは地球の表面積の5.3%にすぎません。それなのに1500年以降に知られている鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類の絶滅の75%が島嶼部で起こっています。」

 

きわどい避難

「島嶼部はIUCNがレッドリストに載せている鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類の36%を支えていて、極度に絶滅の危機に瀕している種にギリギリの避難場所となっています」とエスポジトは言う。

彼女は知らないのであろうか。これらの種の多く、おそらくはほとんどは、生息地が極度に狭かったため、彼らが地球上に現れた最初から危機に瀕していたのだということを。

「島の多くの種が外来の新顔の生物によって脅威にさらされています」と彼女は説明する。「中でも猫とクマネズミが最も影響の大きな外来生物です。」このコメントに人間の活動が出てこないのは驚くべきことである。

 

平均成功率は85%?

エスポジトによれば、論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」が言っているのは、「外来哺乳類を島から一掃することは環境保全のための効果保証付きの道具」であり、「世界的に1,200頭の外来哺乳類が島から一掃されてい」て、「成功率は85%である」ということだそうだ。「年々、より大きく、より遠くにあって難しい島から、外来哺乳類が一掃されるようになっている」のだそうである。

彼女がここで言っていることは、猫やクマネズミといった「外来生物」の根絶に肯定的な学術誌によってですら、反論されているような事柄だ。

たとえば、8人の共著者によって2004年、『保全生物学』誌に発表された論文「島嶼部の野生化した猫の根絶について」は、「30年間の努力で48島の野生化した猫の駆除が試みられたが、広さが10平方キロメートル以上の、わずか10島からしか猫をうまく除去できなかった」と白状している。成功率は21%に過ぎないということだ。

だが、猫の駆除の効率性が過去15年間で改善しているのも確かである。

 

5種を守るために4種が根絶される

エスポジトは付け加える。「論文『外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々』は、自然回復の例として、エクアドルのガラパゴス多島海にあるフロレアナ島、イギリス海外領土のトリスタン・ダ・クンハ多島海のゴウ島、チリのフアン・フェルナンデス多島海のアレハンドロ・セルカーク島に光を当てています。」論文は、これら3島から猫、クマネズミ、ハツカネズミ、ヤギを駆除することが、2種のウミツバメ、絶滅の危機にある1種のアホウドリ、深刻な危機にある1種のホオジロと1種の鳴鳥を脅かす「外来生物の捕食の脅威を除去するだろう」としている。

フロレアナ島に関しては、猫とクマネズミの除去が「既に絶滅した13種の生物の再導入を可能にする」とも言っている。

 

どうして292島が107島に狭められたのか?

そのことはどのようして判断されたのだろうか。

論文は力説している。「絶滅の危機、外来種の衝撃が持つ不可逆性と深刻さ、除去の技術的実行可能性に基づき、292島を特定して最重要な諸島と位置付ける。そこでは外来哺乳類を除去することが危機に瀕した脊椎動物を利することになる。」

「しかし、社会的政治的な実効可能性を考慮すれば、除去を計画または実施することが2020年から2030年の間に開始可能であるのは、このうち169島だろう。それによって、地球上の島嶼部にいる危機に瀕した脊椎動物の9.4%(1,184種のうち111種)の生存見通しを改善することができる。」

「これらのうち、34の国または領土にある107島は、2020年までに始まる駆除プロジェクトを有している。107島の外来哺乳類を駆除することに集中的な努力を払うことで、80種の危機に瀕した脊椎動物の151頭が助かる。また、このことは、世界の国々によって採用された世界環境保全目標の達成への大きな前進を意味する。」

 

捕食は通常第1の最重要な脅威ではない

それらは大胆であるがあまり支持できない主張である。論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」は、捕食以外に希少種を脅かしている多くの原因があることを実際上何も言っていない。

捕食は希少種を危機に導く一つの要因だとしても、主要な要因ではないことが多い。

むしろ、気候変動、遺伝子プールの減少、食糧不足、病気が深刻な危機にある種のほとんどを絶滅に追いやってきたというのが当たっている。全ての、ありとあらゆる英雄的で果敢な方法が彼らのために実施されたにもかかわらずそうなのである。

 

ブランブルケイ・メロミーについて考える

たとえば、『絶滅へのカウントダウン』の編者ジョンR. プラットは2019年3月21日に、「気候変動が絶滅させた最初の哺乳類」という見出しでブランブルケイ・メロミーという小さな齧歯類について書いている。この生物はパプアニューギニアが近いグレートバリアリーフの北の端にあるサンゴ礁の島だけに生息していたが、2009年を最後に目撃されていない。彼らが住んでいた砂の小島は大きさが縦1100フィート、横500フィート余りで、海抜が3フィートしかなかったが、近年、異常気象を原因とする嵐によって被害を受けていた。海水が押し寄せることで、メロミーの唯一の食糧であった島の植物の97%が根こそぎにされた。

こんな無力な種を捕食する動物を殺しても、彼らに僅かばかりの時間しか与えられなかったであろう。それでもこれらの捕食者は死刑に処されているのである。彼ら生物が進化を遂げた条件が全く変わってしまった生息地において。

 

猫、クマネズミ、ヤギを殺しても失われてしまった海の食糧連鎖は戻らない

たとえば、地球温暖化によって海流が変化してしまっている。水の酸性が強まって、甲殻類や貝類が殻を作ることができなくなっている。クラゲだけが彼らが何百万年生きてきたなかで最も数を増やしている。問題の島でも見知らぬ植物が繁茂するようになってきた。これら三つの要因だけを考えても、深刻な危機にある種が依存してきた食物連鎖が根本的に変わってしまっていることがわかる。

どれだけ「外来捕食者」を殺したところで、失われてしまった海の食物連鎖が戻ることはないだろう。

そんな状況で、変わってしまった生息地で繁殖する種を絶滅させ、そうではない、回復の見込みもない種が増えることを夢想するのは、動物の繁殖についての残酷な実験以外の何物でもない。

 

それでも論文の著者たちは正しいと言えるか?

では、仮に、論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」の著者たちの、彼らが望むとおりに「外来捕食者」を殺すための資金が集まり、消えゆく種を守るために彼らができることの評価が全くもって正しいとされたらどうなるか考えてみよう。

そうであるなら何が言えるかは、種と生息域保全に関する、どれだけ大きな構図を考えるかによって変わってくる。

希少種保全に対しても最も敵対的な反対者、たとえば、エネルギー産業などは、論文成功の知らせを歓迎するかもしれない。そして、猫、クマネズミ、豚、ヤギ、ハツカネズミ、マングースを殺すために喜んで資金を出すかもしれないのである。なぜなら、殺処分によって救われるという危機に瀕した種の9.4%は、油田開発、パイプライン建設、パーム油農場にための熱帯雨林伐採、政情不安な海域を通っての原油輸出、原子炉の稼働と一切関係がないということになるからである。

 

危機に瀕した種の全てが生態系における重要さで等しいわけではない

しかしながら、その危機に瀕した種の9.4%を救うことが、陸上または海底の見境のないエネルギー開発の結果として5%の希少種の絶滅を招くことでチャラになるかもしれないということは印象的である。

「世界的に重要な島々」に住む危機に瀕した種の9.4%は生息数が極めて小さい。生息範囲も限定的であるため、他の種の生存に寄与するわけでもない。それらは生物資源として、また、生態系での必要性において、クジラ、グリズリー、キジオライチョウ、オランウータンなど、エネルギー開発によって危機に瀕している無数の他の種に比べて小さく評価されなくてはならない。

全ての危機に瀕した種が生態系での重要性において等しいわけではない。論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」がスポットライトを当てる9.4%を救っても、このようなトレードオフが利する産業や経済開発がもたらす陸上や海底の生態系の破壊を埋め合わせることは絶対にできないのである。

 

野生動物のための跨道橋

たとえ、皮肉なトレードオフの可能性を除外して考えても、種と生息地保存のために使える資源は限られている。離島の希少種9.4%を猫、クマネズミ、犬、豚、ヤギ、ハツカネズミ、マングースから守るために1セント使うたびに、残り90.4%の絶滅危惧種を救うために使われる1セントが減っていく。

しかも、島嶼部の希少種以外の90.6%のうち多くの種は、生息地の自然を破壊するようなことにならない、簡単で安価で、生態学的な危険の少ない方法で彼らの危うい生息地が守られるだけで、長期間にわたって生存可能であると診断されるのである。

1ドルごとの支出が相応の価値を持つ。一例をあげるなら、野生動物のための跨道橋を作ったり、土地を買ってグリズリー、バイソン、エルク、ビックホーン、プロングホーンが安全にロッキー山脈地帯に移住できるようにしたりするだけで、おそらくは危機に瀕するより多くの種が助かる道を見出せるのである。そのなかには、人気のある大型生物の活動に依存して生存しているような小動物も含まれる。そうすることの方が、彼らの生息地全体が差し迫った危機にある島嶼部の種を救うために何かをするより、生態系全体のためには重要なのである。

 

エドワード・ハウ・フォーブッシュの子孫たち

要するに、どんなに科学の装いをしていても、論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」は、これまでも山のようにあったトンデモ本の最新版に過ぎないということである。これは思想的に、1916年にエドワード・ハウ・フォーブッシュが出版した『イエネコ:鳥殺し、ネズミ殺し、野生動物の殺戮者:それをいかに利用し管理するか』の子孫である。

フォーブッシュ(1858-1929)は19世紀後半から20世初頭にマサチューセッツ州にいた鳥類学者である。その今日にまで及ぶ影響は大きいが、彼が猫に対して根強く持っていた敵意は、科学的というより、愚かな信念といったようなものに基づいていた。

 

カモメの身代わりに非難された猫

フォーブッシュの本には明らかな間違いが目立つが、そのなかにナンタケット沖のマスケゲット島でベニアジサシが減っていることで猫を非難しているということがある。フォーブッシュが誤って猫の捕食が原因としていたことの真犯人は、後にカモメであることが学術的に確認された。

フォーブッシュはまた、ケベックのフランス語でアライグマをノネコと呼ぶことから、アライグマの習性をまた聞きで知識を得た猫の習性と混同して記述している。同様の混同の誤りをボブキャットとイエネコについて犯してもいる。

それなのにフォーブッシュが推奨したことの多くが、希少鳥類を守るという名目で実施され、数千頭の猫が殺された。しかし、ベニアジサシを含むそれら鳥類のほとんどが、数世代を経た今も回復したと言うにはほど遠く、より良い本当の科学的研究を必要としているのである。

 

結局のところ、彼らの論文が意図に反して示しているのは、猫たちは本当の問題ではないということだ

ある意味で論文「外来哺乳類を根絶することが極度に脅威にさらされている脊椎動物を利することになる世界的に重要性を持つ島々」はフォーブッシュから見て戦線からの退却を意味している。しかも、著者たちも意図しなかったはずの撤退である。

フォーブッシュから現在のオーストラリア、ニュージーランドの政治家に至る猫恐怖症患者たちは、猫が至るところ、あらゆるところで鳥などの野生動物を脅かしていると言う。論文「世界的に重要性を持つ島々」の著者たちは、しかるに、想定される脅威を猫から犬、クマネズミ、ヤギ、ハツカネズミ、マングースにまで拡張していながら、範囲を地表面の1%へと狭めているからである。

この事実は私たちにいくつかの気付きを与えてくれる。すなわち、いわゆる「外来種」は広く宣伝されているような意味で、生物多様性への脅威ではないということだ。そして、おそらく、実際は全く脅威ではないのである。


ANIMALS24-7の編集者メリット・クリフトンは、

1968年から主に動物に関するニュースシリーズでジャーナリズムに身を捧げ、1990年からは環境ジャーナリスト協会の創立会員として活動。2010年、新たに発生した人畜共通感染症病原体に関する動物の行動学的ないし文化的側面の理解を深める寄稿が評価され、国際感染症学会が毎年インターネット上の優れた発生報告に送られるProMED-mail賞を受賞。過去には、1988年から92年まで雑誌「動物の課題」のニュース編集者、92年から2013年までは新聞「動物派」の編集者、そして99年から2013年までは動物関連の慈善団体に関する年次監視報告書の編集者を務めた。1995年、第一回の殺処分廃絶会議では基調講演を行った。

ベス・クリフトンはメリット・クリフトンの妻として、そしてソーシャルメディア編集者兼写真家として、初期の不振期にあったANIMALS24-7に加わった。べスの貢献で読者は瞬く間に倍になり、更に2年後には5倍にまで増加した。ベスは過去に騎馬警官隊員、動物管理職員、獣医看護師、また学校教員として働いた経験をANIMALS24-7で活かしている。

メリット・クリフトン と
ベス・クリフトン

 

(山﨑好裕訳)

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