海外メディア注目 奄美の猫3000頭捕獲・殺処分計画

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「世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」

※どうぶつ基金ではAnimals24-7の許可のもと記事の翻訳を掲載しています。

An Easter bunny, cat, & mongoose story from a Japanese island原文

 

どうぶつ基金事務局コメント:

今年4月21日は、キリスト教の復活祭であるイースターの祝日でした。イースターのシンボルは卵とうさぎです。

うさぎと言えば、今日本で注目を集めているのがアマミノクロウサギ。

どうぶつ基金は、朝日新聞が3月末にアマミノクロウサギの個体数の劇的増加を明らかにしたこと受け、協力者らと共に4月11日に環境大臣や財務大臣宛に要望書を提出し、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」の即時全面的な見直しを要請しました。

これに反応し、うさぎが主役となるイースターの祝日に合わせて、アメリカを拠点に活動するジャーナリストのメリット・クリフトン氏が独自の調査に基づく考察を交えたアマミノクロウサギについての記事を公開しました。動物に関する幅広い調査経験を持つクリフトン氏の指摘は、アマミノクロウサギについての日本での議論に新たな視点をもたらしてくれる、大変示唆に富んだ内容となっています。

 

日本の離島から、イースターうさぎと猫とマングースの物語

捕食動物が不当に責められ、古代生物アマミノクロウサギは復活

2019年のイースターうさぎの物語は、離島の生態系の話でもあり、さらに鳥類学者による卵狩りについての視点も併せ持つものであるが、日本の本土と沖縄の間にある奄美大島と徳之島で進行中の話である。しかしながら、日本の環境省が明らかに当惑しているように、うさぎにまつわるこの物語は、台本通りに進んでいない。

まず初めに、公式に絶滅危惧種とされているアマミノクロウサギは、爆発的に復活している。一方で、ウサギの生存への主要な脅威とされている野外の犬猫やヤギは、未だに多数存在する。

 

病気の脅威

ウサギの減少について最も責めを負っている種であるマングースも、未だに残っているのかもしれない。現時点でアマミノクロウサギに対する最大の脅威は、病気によるものではないだろうか。ウサギの個体数が増え密度が高くなっている可能性があるため、生命にかかわる病気が発生すれば、急速に感染が拡大しかねないからだ。

ウサギの出血性疾患や粘液腫病(オーストラリアやニュージーランドで、自称島の浄化人によって何度も持ち込まれた)が何かの拍子に持ち込まれれば、アマミノクロウサギにとってかつてない最大の脅威となりえる。ウサギの出血性疾患と粘液腫病のどちらも、しばしば長い距離を超えて意図せず伝播してきた。

犬・猫・マングースのような捕食動物は、アマミノクロウサギのような多産な草食動物を捕食するが、捕食動物がいない環境では、獲物となる種がより大規模にかつより早く減少する可能性もある。弱い個体を狙い撃ちする捕食動物がいなければ、病気の動物から健康な動物に病気が感染しやすく、特に、個体数が増えている多産動物が物理的に入り混じる状況であればなおさらだ。

 

犬、猫、ヤギ

もし奄美のマングースが本当に根絶されていれば、今度病気が発生した時には犬や猫はアマミノクロウサギの救済者となるかもしれない。もしかしたら、既に今までにも、何度もそうした働きを担ってきたのかもしれない。

犬や猫は、奄美大島と徳之島に人間が定着し始めたころから、それらの島に存在してきた。その期間は1,500年かそれ以上になる。すなわち、犬猫とアマミノクロウサギは長年に渡って、行動面で共に進化を遂げてきたのだ。

しかしながら、ヤギの祖先は、狩猟用と食用の群れを形成する目的で、1966年になって初めて島に放された。これは、2006年4月の読売新聞の記事の中で当時78歳の元自治会長イケシマミツシ氏が語ったものだ。ヤギは、アマミノクロウサギの生息域に直接的に影響をもたらしたと考えられている。

 

ヤギを守るためにジャワマングースを導入

アマミノクロウサギは、食糧としては森の新しい成長区域を好むが、巣作りには古い成長区域を好むとされている。このため、アマミノクロウサギは、異なる森の区域を行き来できるように、その境界にあたる生息域にいることが最も多い。

ヤギが食べてしまうことで、こうした森の境界にある生息域が破壊されているとされたが、シカと同じように成熟した木の皮を剥くことによって、実際には境界生息域を増やしている可能性がある。

いずれにしても、奄美大島と徳之島のヤギは、毒蛇であるハブの4種類に対して脆弱であることがわかった。これに伴い、1979年にハブ対策としてジャワマングースが島に持ち込まれた。

ハブはアマミノクロウサギの主要な天敵であると考えられていたし、現在もそうである。母ウサギが授乳の合間に赤ん坊たちを地面の下に作った巣穴に隠す(そして2,3日に一度だけ授乳のために戻ってきて赤ん坊を掘り出す)行動は、幼いウサギをハブから守るために発達したものと考えられている。

 

マングース対ウサギ

マングースの到来はアマミノクロウサギを助けるものと期待されていたが、明らかにマングースはヘビを食べるよりもウサギを食べる方を好んだ。

2004年から始まったマングース根絶の試みと並行して、ウサギの数の回復が見られた。しかし、こうした状況の因果関係は単純ではなさそうだ。特にハワイやカリブ諸国の一部など、様々な島で、導入されたマングースが希少な鳥の個体数を激減させたとして広く責めを負っているが、奄美大島と徳之島のウサギを苦しめている本当の原因は、ウサギの生息域を破壊した観光目的の開発(特にゴルフ場の建設)であった可能性がある

マングースはウサギも食べたが、ある程度はハブを食べた。

現実的にありそうな話だが、奄美大島と徳之島にマングースが少しでも残っているとすれば、島の大きさや残っている森の密度、地形堅牢度を考えると、近年のウサギの復活は、マングースの復活、そしておそらくハブの復活も促しうる。

 

遺存種

鹿児島県の一部である奄美大島と徳之島は、2000万年前にアジアウサギ目(ウサギやナキウサギを含む分類)から派生したと考えられる遺存種のアマミノクロウサギが生息している唯一の地域である。

多くのウサギと比べて小さめの耳、短めの足と後肢、そして大きめの胴体と穴掘りや時折の木登りに使われる長く湾曲した爪によって特徴づけられるアマミノクロウサギは、アジア大陸であらゆる近縁種が死滅しても、奄美大島と徳之島でどうにか生き残り、繁栄した。

奄美大島と徳之島はどちらも火山起源の島で、高温多湿、ほぼ全域が森林に覆われており、頻繁に台風に見舞われ、珊瑚礁に囲まれており、新石器時代以降は時折人間が住んでいた。人間の継続的な居住のが記録されているのは、西暦600年から700年頃の日本文学が最初である。

 

クジラ、鳥、カエルの見物

奄美大島と徳之島の表面面積は、合算してようやく600平方マイルに届く程度だ。大きい方の奄美大島には、現在約73,000人の人口がいる。小さい方の徳之島の人口は約27,000人だ。

2つの島を併せた人口密度は1平方マイルあたり166人であり、際立った田舎と言える。しかし、2島にある奄美市とその他7つの地域は、観光業を拡大しようと協働しており、特にクルーズ船からザトウクジラや他の種類のクジラを見るツアーや、奄美大島の大部分を占め、1974年に国定公園に指定された奄美群島国定公園(訳者注:2017年に国立公園に指定され、現在は奄美大島国立公園)を訪れるツアーを売り込んでいる。

奄美大島国定公園には、オランダ人動物学者セオドア・ジェラルド・バン・リズ・デ・ジュード(1744年‐1830年)によって示された標本にちなんで学名を付けられたルリカケスが生息しているが、ルリカケスは羽根を狙う狩猟者によって絶滅寸前にまで追いやられ、マングースの捕食の影響で現在も希少であることが示されている。訪問者を惹きつける他の希少種には、夜行性のアマミヤマシギ、リュウキュウコノハズク、そして様々な固有かつ在来のカエルがいる。

折に触れ、マングースはルリカケスの回復を邪魔しているとされたこともある。しかしながら、ルリカケスもアマミヤマシギもリュウキュウコノハズクのどれも、猫や犬の捕食対象として認識されてはいない

 

ウサギは1921年からある意味保護されてきた

アマミノクロウサギの保全に対する懸念は、奄美大島に野生化したヤギもマングースもまだいなかった40年以上前に出てきたものだ。アマミノクロウサギは当初、奄美大島と徳之島の人口が増えたのに伴い、狩猟や罠での捕獲によって激減した

日本政府は1921年にアマミノクロウサギを「天然記念物」に認定することでこれに対応した。これによってウサギの狩りは無くなったが、滅多に目視できないウサギにとってより深刻な脅威であった罠による捕獲は、1963年にアマミノクロウサギを「特別天然記念物」に格上げし、合法的に罠が使用できなくなるまで続いた。

国際自然保護連合のウサギ目専門家グループは、1990年にアマミノクロウサギの個体数を回復させるための様々な対策を推奨したが、日本の環境省が1999年に奄美野生生物保護センターを設立し、アマミノクロウサギが未だに希少であることを確認するまで、ほとんど何の対策もなされなかった。

 

糞を数えることからクローン生成まで

2000年になって、写真家で自然保護活動家の浜田太氏が、めったに見られないアマミノクロウサギを豊富にとらえた写真集を発表したことで、ウサギの回復に向けた取り組みに対して市民の支持が得られるようになった。

2003年、糞の塊を数え、目撃情報を調査するといった手法で調査が行われ、奄美大島にはおそらく2,000頭から4,800頭のアマミノクロウサギが残っており、徳之島ではわずか120頭から300頭しか残っていないとされた。アマミノクロウサギは2004年に日本の絶滅危惧種に指定され、マングース追放の試みはその1年後に始まった。

しかしながら、2008年7月に猫がアマミノクロウサギの死骸をくわえている写真が撮影されるまでは、猫や犬の糞からウサギの骨が発見されたというだけでは、犬猫が政府の攻撃対象リストに乗ることはなかった。

2008年11月に発表されたアマミノクロウサギのクローン化の試みは、明らかに失敗したらしい。

 

「猫を殺せ!」

10年後、奄美大島と徳之島のノネコの数は600から1,200頭であるという見積もりのもと、日本の環境省はマングースと同じく猫も殺すことに決めた。もっとも、アマミノクロウサギの数が公式発表のとおりに少なかったとすれば、それだけのノネコがいればアマミノクロウサギは一週間以内に絶滅しかねないのだが。

計画は、1年に約300頭のペースで10年間、猫を殺すというものだが、そのペースだと実際に猫の数を減らすことには全く繋がらない

どうぶつ基金という非営利組織は、これに対応して2018年8月にTNR活動を開始した。

この動きに触発された朝日新聞の太田匡彦記者は、日本の情報公開法を利用し、アマミノクロウサギの頭数についての環境省の公式調査データを入手した。

 

ウサギの数は5倍から10倍に増加

太田氏は、こうして明らかになったことを2019年4月10日に発表した。

奄美大島のウサギの頭数は2003年の調査以降、1度しか調査されていないことがわかった。その調査は2015年のもので、糞の数え上げや目撃情報に基づく従来の手法に加え、カメラを使った手法も用いられた。

太田氏によると、2015年時点で「奄美大島のウサギの数は15,221頭から19,202頭と推定された。カメラを用いた調査手法では、ウサギの数は16,580頭から39,780頭と見積られた。」

太田氏は「推定数にばらつきが大きいことを受けて、専門家の中には、環境省はウサギの数を過大評価している可能性があると言う者もいる」と補足している。「しかし、環境省の那覇自然環境事務所で野生生物課長を務める岩浅有記氏によると、どちらの推定も適切に行われたということだ」。

岩浅氏いわく、「アマミノクロウサギの数は間違いなく増加している。どちらの手法でも、少なくとも10,000頭から20,000頭のウサギがいることが示された。これらの推定は、現場感覚とも合致している。」

太田氏は、2023年までにアマミノクロウサギが現在の位置づけよりも絶滅の危険度が低い分類に格下げされる可能性にも触れている。

 

猫は既にほとんどいないくらいに少ない

政府の計画に沿って奄美大島から猫を根絶するためには、9年間で5億円、米ドルで言うと450万ドルの費用がかかる。

どうぶつ基金および学術界や非営利分野の様々な協力者らは、日本の環境省、財務省、鹿児島県知事、そして奄美大島の5つの地域の市町村長らに対して、「『奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(2018 年度~2027 年度)』の即時全面的な見直しと猫の殺処分の中止」を求めて要望書を提出した。

どうぶつ基金は、特に「2003年から2015年の12年間、環境省が捕獲したノネコの数が2012年7頭、2013年6頭に過ぎないという事実は、猫がアマミノクロウサギにとって全く脅威になっていないことを明証している」という理由を挙げ、2003年のデータに基づいた同管理計画は「科学的調査に照らして妥当性を欠いていることが明らかになった」と告発している。


ANIMALS24-7の編集者メリット・クリフトンは、

1968年から主に動物に関するニュースシリーズでジャーナリズムに身を捧げ、1990年からは環境ジャーナリスト協会の創立会員として活動。2010年、新たに発生した人畜共通感染症病原体に関する動物の行動学的ないし文化的側面の理解を深める寄稿が評価され、国際感染症学会が毎年インターネット上の優れた発生報告に送られるProMED-mail賞を受賞。過去には、1988年から92年まで雑誌「動物の課題」のニュース編集者、92年から2013年までは新聞「動物派」の編集者、そして99年から2013年までは動物関連の慈善団体に関する年次監視報告書の編集者を務めた。1995年、第一回の殺処分廃絶会議では基調講演を行った。

ベス・クリフトンはメリット・クリフトンの妻として、そしてソーシャルメディア編集者兼写真家として、初期の不振期にあったANIMALS24-7に加わった。べスの貢献で読者は瞬く間に倍になり、更に2年後には5倍にまで増加した。ベスは過去に騎馬警官隊員、動物管理職員、獣医看護師、また学校教員として働いた経験をANIMALS24-7で活かしている。

メリット・クリフトン と
ベス・クリフトン

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