どうぶつ基金は奄美のネコ3000匹駆除に反対します。

反対署名10万筆まであと少しです。下記ページよりchangeorg.への署名をお願いします!
「世界遺産を口実に、奄美や沖縄の猫を安易に殺処分しないでください!」


こんにちは
どうぶつ基金理事長の佐上です。

最近、ニュースや国会中継でコロナ禍におけるオリンピック開催の是非に対するやり取りを見ていると、
記者や議員の質問に対して、大臣や議員が答えになっていない返答をしている場面をよく目にします。

少し前まで
「どのような状態になったらオリンピックを中止しますか?」という質問に対して、
政府は「中止しなければならないような事態を起こさないように努力します」
という返事をします。

「それって答えになっていないんですが?」と何度聞いても、
何度も同じ返事を棒読みして繰り返す。
いい加減、何十回も同じ返事をしていると本人も飽きるのでしょうか。

今度は「1964年の東京オリンピックは素晴らしかった!
東洋の魔女と呼ばれた日本女子バレーチームの活躍は感動的だった!」
と一人で感動して語りだす。

国民も記者も「こりゃ何度聞いてもダメだ」とあきらめさせて、
中止という言葉は忘れさせて、
開催ありきで観客を何人いれるという議論に変わってしまう。
国会や行政の場で繰り返し行われてきました。

なぜでしょうか。

答えは「この方法は、とっても簡単で大抵うまくいく」からです。

私たちが反対している奄美大島の猫3000頭駆除計画についても、
環境省や地元行政に何度も公開質問をしています。

環境省側は同じような方法で説明責任を果たさず、
私たちに「もう、この人たちに何を言っても無駄だから、あきらめよう」
と思わせようとしています。

こういう単純で稚拙な作戦は、どうぶつ基金には通用しません。
なぜなら私たちは絶対あきらめないからです。

そこで、今回は私たち納税者の知る権利と、
行政の回答する義務について、
おなじみマエキタミヤコさんに教えてもらいます。

民主主義の基本は、「説明責任」と「知る権利」。

マエキタミヤコ

私たちが払っている税金の一番大きな使い道は、
行政職員の人件費(公務員のお給料)です。

「行政(ぎょうせい)」というのは、お役所のことです。
お役所には2種類あります。

国、というか、地方自治体でない日本国のお役所としては、
環境省、経産省、財務省、文科省、外務省、法務省、防衛省、厚労省、
総務省、農水省、国交省、内閣府、などがあり、
千代田線の霞ヶ関駅のまわりに集まっています。

中央官庁とも呼ばれます。

地方自治体のお役所は、東京都庁や神奈川県庁など各都道府県にあります。

日本国の官庁で働いている人を官僚(かんりょう)といいます。
県庁で働いている人は地方官僚です。

大きな規模のおかねを動かしている、特に私たちが払っているおかねである
税金を使っている行政の機関は、私たちに、どういう目的で、
どの様にして使ったのか、それは正しかったのか、を
明らかにして説明する責任が常にあります。

それが「説明責任」です。

試験でいい点を取った秀才で高学歴な人が集まっている組織だから、
頭のいいえらい人たちだから、税金という大きなおかねの使い道を
自由に考えたり動かしたりできる、というわけではありません。

いまの日本は民主主義の世の中です。なので、行政だけではなく、
社会的な責任を果すといって営業しているすべての組織や会社に「説明責任」があります。

でも、特に重い「説明責任」が、行政と上場企業には求められます。

なぜなら、税金を払う人には、
政治を選ぶ権利があり、投票権があるからです。
投票権がある、ということは、
政治を選ぶために知る権利がある、ということです。

知らないと選べませんもんね。どこに投票したらいいか、をね。
なので、行政には説明責任があります。

でも、この説明責任は、私たちが黙っていたら、得られません。

さあ、たいへんです。

「説明しなくてはいけない」というのは、とてもよいきまりですが、
いちいち、説明してください、説明責任があるでしょ、と
リマインドしないといけないのです。

民主主義って、本当にめんどくさいですよね。

そんなのボタンひとつで、いや、もう最初から説明責任はあるのだから、
いわなくても最初から説明してくれればいいのに。
頭のいい人たちなんだから。とつい言いたくなります。

でも、そうなんです。頭のいい人たちなので、
めんどくさいことはなるべく省きたいと思っているんです。

説明責任を果たすのにも、労働時間がかかってしまいます。
残業代は出るにしても、労働時間が長くなると睡眠時間を削るしかなくなって、
頭がボーッとしたり、鬱になったりします。

そんなのはみんなイヤです。だから、最初からは説明しないのです。
うっかり自分から説明しちゃうと、もしかしたらボロが出るかもしれないし、
ボロが出たら、ますます説明責任が求められちゃって、
睡眠不足になって、ますますボロが出て、そんなの悪循環じゃん、と
先回りして思っちゃうでしょうからね。

というわけで、めんどくさくても、
説明責任はいちいち、求めないといけないんです。あー、めんど。

でも、どうぶつ基金は、あーめんどー、とか言ってられません。
猫たちの命がかかっています。

九州の鹿児島県と沖縄県のちょうど中間に、
鹿児島県の島、奄美大島(あまみおおしま)があります。

この2021510日に環境省が、
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄)について、
世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)が
世界自然遺産への登録を勧告したと発表して、話題になっています。

世界自然遺産への登録に大きく影響するといわれているのが
この奄美大島と隣の徳之島にすむ固有の絶滅危惧種「アマミノクロウサギ」です。

体長は40~50センチ程度。
ウサギ科の中でも原始の姿をとどめている種と考えられており、
2004
年度から国が保護増殖事業を行っています。

ハブの駆除のため奄美大島に持ち込まれた外来種マングースが
アマミノクロウサギを捕食していたため数が減ったと考えられています。
マングース駆除計画は2000年から実施され、2015年にはほぼ完了し、
奄美大島のアマミノクロウサギは増加に転じています。

奄美大島では野生化したネコがアマミノクロウサギを食べ
絶滅させているという現実に即さない奇妙なストーリー。
ネコの殺処分「ノネコ管理計画」について説明を求めます。

世界自然遺産への登録自体はとても喜ばしいことです。
でも気になるのは、世界自然遺産への登録をめざして環境省が作って実行している
「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画 (2018年度~2027年度)」です。

どうぶつ基金が徳之島でアマミノクロウサギを守るための
ネコの一斉TNRをした際にはわからなかったのですが、その後
「奄美大島における生態系保全のための
ノネコ管理計画 (2018 年度~2027 年度)」のことを知り、
立脚しているはずのデータの曖昧さや、動物愛護法に反する危険性を感じました。

そこできちんと声を上げることにしました。
私たちが声を上げなければ、だれもぬれぎぬを着せられて
捕まって殺される猫たちのかわりに、環境省に説明責任を求める人が
その時は見当たらなかったからです。(今は増えていることを祈ります。)

ノネコ、というのは、かつてペットとして飼われていたけれど
逃げ出して山で暮らしている猫のことで、
自然の生態系を乱す外来種として殺処分しなければならない、
というようなことが書かれています。

それもそうかな、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
この「山で暮らしている」というところが
「町で暮らしていても」にすり変わって運営されようとしている今、
反動物愛護法になる、という問題が発生しています。

具体的には、奄美大島では「猫が外を歩いていたら、すぐ捕まえて、
すぐ殺処分されてしまう、飼っている猫だろうが、地域猫だろうが。」
という危険性がある、ということです。
とんでもない「ノネコ管理計画」です。
この危険性を拭い去るために、どうぶつ基金は説明責任を求め続けています。

ノネコと呼ばれ、ネコに着せられる、あぶない「ぬれぎぬ」。
奄美大島のアマミノクロウサギ を食べていたのはマングース。
マングースがいなかった徳之島でも、タンカンの木のかじりが問題になるくらい増えた。

奄美大島と徳之島はちょっと事情が違います。
マングースがいたのが奄美大島。徳之島にはマングースはいませんでした。
でも奄美大島でも徳之島でもアマミノクロウサギは
現地の聞き込み調査をする限りでは増加傾向です。
きちんとしたアセスメント(アマミノクロウサギ の数を数えて発表すること)を
早くしてもらいたいものです。

新聞記事にもなっています。

「絶滅危惧種で生息数が数千匹と推定されているアマミノクロウサギ は2015年時点で、
奄美大島だけで1万5千~3万9千匹にまで回復しているとの推定結果をまとめたことがわかった。
捕食者のマングースの駆除などが奏功したとみられる。
同省は23年度までに、今より絶滅の危険度が低いランクに見直すことをめざしている。」

これは2019年3月25日16時の朝日新聞デジタルの記事です。
(タイトルは「絶滅危惧アマミノクロウサギ、増加か 天敵駆除が奏功」太田匡彦記者)

記事には細かく、9年分の24ルートのふんの量調査と森林内に設置した
564
台の撮影データから環境省が推定した、と書かれています。
ところが同時に「環境省はこれまでアマミノクロウサギ の奄美大島での
推定生息数について、2003年度のデータが最新で2千~4800匹としてきた」とも書かれています。

さらに
「環境省那覇自然環境事務所は
「推定方法は適切だと考えているが、まだ数字にばらつきが大きく、
専門家からは『過大評価している可能性がある』などの指摘があった。

ただ、アマミノクロウサギが増加傾向にあるのは間違いなく、
二つの手法ではいずれも下限値が1万~2万匹と出ており、
より精査が必要だが、この数字は現場感覚からも現実的だ」
(岩浅有記・野生生物課長)としている。」と書かれています。

2015年、環境省那覇自然環境事務所はマングースの駆除が終わったため
アマミノクロウサギが増加傾向になったというデータが手元にあるのに、
ホームページでは発表せず、マングースではなく今度はノネコ、という
「奄美大島における生態系保全のための
ノネコ管理計画 (2018 年度~2027 年度)」を発表しています。

どうぶつ基金はこの計画について何度も質問していますが、
納得のいく返答はまだありません。

『ネコ・かわいい殺し屋~生態系への影響を科学する』(築地書館)という
本にもあるように、確かにネコは家の外で飼えば周辺の生態系を
おびやかす外来種かもしれません。

でもそのネコを周辺の生態系と同じぐらい愛している、
大事にしている人間もいて、その人たちが作った法律である動物愛護法があり、
この社会が成り立っています。

飼い主がいなくなってしまったネコの福祉、ネコの幸せ、も守られています。
生態系をおびやかすからといって簡単に殺処分していい、
ということにはならないのです。

生態系と人間社会の両方を持続可能にするためにも、
両立をしっかり考えていかないといけないのです。

周辺の生態系とかつての飼い猫とその末裔たちが、
もし交じることが互いの危害を免れないのであれば、適切な距離を保ち、
お互いの幸福、福祉のためになる位置を慎重に決めていかなければなりません。

計画を実行する人たちの行動が信頼に足るものか、という細かなことも重要です。
これまで積み重ねられてきた「動物愛護法」を尊重し、
共に「自然保護」を進めていくには、信頼が必要です。

動物愛護と自然保護を対立させることなく、お互いを尊重し、
科学的なデータにのっとって、力を合わせて問題を解決していく姿勢が求められています。

だからデータは大事なのです。隠したり、
発表のタイミングをずらしたりすると、信頼が損なわれるので、良くないのです。

奄美大島では、地元の動物愛護団体やボランティアさんに助けられ、
厳密にTNR(捕獲、避妊手術、里親さがし)が進められ、成功し、
マングース駆除も成功し、アマミノクロウサギが増えています。

よかったです。マングース駆除のおかげです。
ノネコ管理計画のおかげではありません。
(ノネコ駆除は2003年から2015年までの間に13頭でした)

私たちはこれからも、世界自然遺産への登録だけでなく、
奄美大島と徳之島が末長くそのゆたかな自然環境と生物多様性を保てるように、
見守り続けたいと思います。

自然環境を守るためには、人間界の民主主義も健康でなければなりません。

奄美大島であろうと、徳之島であろうと、データをねじ曲げたり、改ざんしたり、
発表を遅らせたり、虚偽の説明をしたり、
虚偽のデータに立脚した研究者の企画に予算をつけたり、
説明責任を求めても果たさなかったり、質問を無視したりするのは、
民間企業であろうと、行政機関であろうと、してはいけないことなのです。

それが民主主義の世の中で、自然を守り、かつ、
ペット動物の命も大事にする、ということです。
自然保護法や動物愛護法の両方を遵守する、ということです。
法治国家なのですから。

どうぶつ基金はこれからも、「奄美大島における生態系保全のための
ノネコ管理計画 (2018 年度~2027 年度)」が悪運用されないように、
見張り、説明責任を求め続けていきます。

どうぶつ基金の活動をご支援ください。

(文責:マエキタミヤコ)

あなたのご寄付が、地球を守ります
知ることは、アクションの始まりです

https://www.doubutukikin.or.jp/contribution5/


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