ペットは買わないで飼う。それがエシカルショッピング

きいたこと、ありませんか。エシカル。

エシカル単独でも使いますが、エシカル消費、エシカルショッピング、のように
組み合わせた言葉もよく使われるようになりました。

「エシカル ethical」。英語で「倫理的な」という意味です。

劇的に進化した倫理

じゃあ「倫理 ethic」って、どんな意味だっけ。

大辞林には
①人として守るべき道。道徳。モラル。
②「倫理学」の略。」とあります。

ついでに「倫理学」もひいてみると、
「[井上哲次郎によるethicsの訳語]道徳・倫理の起源・発達・本質などを
研究対象とする学問。

その中心問題は道徳規範と善の問題である。論理学（または認識論）・
美学とともに哲学の基本的部門とされてきた。」とあります。

善いこと、道徳的なこと、モラルあることをしたときに、
「それって、エシカルだね」というわけです。
ん、じゃあ何で、道徳的だね、とか、モラルあるね、じゃダメなのかな。

新しい価値観が出てきたとき、
古くからある（この場合「道徳的、モラルがある」という）言葉では
誤解を招くとき、一緒にされるとちょっと困っちゃうとき、
強く注意喚起したいとき、昔からあるけど手垢のついていない言葉を
新たに使うことはよくあります。

「エシカル」は、昔からよく使われていた言葉ですから、新しい言葉
というより、この頃よく新聞やテレビで使われる言葉、です。

では、エシカルがよく出てくる新しい価値観の場面、とは、
どんなところでしょう。

それが「環境」です。

エシカルの意味、本当は「倫理」だけなんですけど、この頃では
「環境倫理」を縮めてエシカルという場合もあります。

「環境にいい」と言いたいとき、ちょっと前は「地球に優しい」
と表現していました。「持続可能な」とか「サステナブルな」とか
「生態系を守る」とも。

もともと自然環境は理科、生物、化学などの自然科学の領域です。
さらに人間の活動が自然環境に影響を与えるしくみも入ってくるので、
経済学や社会学などの人文科学の領域も加わります。

「石油など化石燃料を材料にしている電力をたくさん消費すると
二酸化炭素がたくさん出て気候変動が悪化する、だから、
化石燃料由来の電気をたくさん使うことは、環境によくない」。

「国家の財政が悪化すると医療費と教育費が少なくなり、
特に女子教育が抑えられ男女格差が広がり、ジェンダー指数が落ちる。
ジェンダー指数が落ちると、出生率は増え幼児死亡率は高まり、
貧困がますます加速する」。

「気候変動が悪化すると豪雨や台風や竜巻や水害などの自然災害が多くなり、
人命が失われ、社会のインフラ基盤が損なわれ、貧困や格差が広がる」。

「人間が捨てた化石燃料（プラスチック）のゴミが魚の体内に入り、
それを食べた人間の健康を損ねる」。

「人間が海や空気中に捨てた原子力発電ゴミ
放射性物質が魚や農産物に入り、それを食べた人間の健康を損ねる」。

「山の木を切り過ぎると地滑り（土石流）で
山の下にある家が潰れる」。などなど。

人間の社会が自然環境を破壊することで、善くないことがたくさん起こるように
なったのは、それまで「善くないことだ」という認識が欠けていたのが原因です。

今では、学校で「自然破壊の悪影響」を教わるので、
だんだんと常識になってきています。

でも、学校で教わってこなかった大人たちのなかにはまだ、認識不足の人、
新しい倫理観がまだ身についていない人、ハンドルが切れていない人が
たくさんいます。

その人たちに向けて、何が新しい「善いこと」なのかを発信するのが
「エシカル」という言葉の役目です。

「道徳」が更新されたともいえるかもしれません。
ジェンダー、LGBTQ、モラルハラスメント、ドメスティックバイオレンス
などの新しい言葉は、どれも人権と暴力にまつわる
新しい基準づくりの役割を担っています。

「蔑視と虐待」

まだ古い価値観の中に住んでいる人は、もしかしたらこう感じて
いるかもしれません。

「昔はやってよかったことなのに、
なぜか急にダメになった。なんでだろう。。。。」

たとえば女性蔑視。オンナはダメだ。

・オンナは家にいて子どもの面倒をみていりゃいいんだ。
・大学なんか行かせると生意気になってろくなことにならない。
・オンナに仕事をさせるのもダメだ。
・自立なんかさせたら自由になるお金が手に入って偉そうなことをいい出してうるさい。
・会社に入ってもいいが、結婚したら退職だ。オンナの上司なんてとんでもない。
・オンナが社長の会社とは付き合えない。
・家のなかで妻がいうことを聞かなければ叩いてでもいうことを聞かせる。
・そうしないと、大変なことになってしまう。

20年前までは、いまよりたくさんの人がこう思っていました。
でも今では、とんでもないジェンダー錯誤です。

たとえば児童虐待。子どもは厳しくしつけないとダメだ。

・いうことを聞かなければ聞くまで立たせる、ご飯を食べさせない、
・それでもダメなら暴力をふるってでもいうことを聞かせる。
・子どものときはとにかく厳しくしつけないと、大変なことになってしまう。

これも20年前までは、いまよりたくさんの人がこう思っていました。
でも今では、とんでもない子育て錯誤ですよね。

たとえば動物虐待も、です。

・犬猫はほおっておくとどんどん子どもが産まれるから、間引かないと増えてしまう。
・子どもが生まれたらすぐに袋につめて海に沈める、川に流す。
・子どもの情操教育にいいかなとペットショップで犬を買ったら
　糞が臭くてかなわないから保健所に引き取ってもらう。
・散歩が大変になったから保健所に引き取ってもらう。
・誰かいい人にもらってもらうんだよと段ボール箱に入れて
「もらってください」と書き置きして道ばたに置いてくる。
・飼いきれなくなったからと首輪を外して自由に放してあげる。