【視察レポート:アフリカ編】アフリカのサイには○○がない!?
皆さんこんにちは、
どうぶつ基金理事長の佐上邦久です。
写真は南アフリカのクルーガー国立公園で会ったサイ(ミナミシロサイsouthern white rhino)です。
このサイに遭遇した時、私は何とも言えない違和感を覚えました。何かが変なんです。
そこで問題です!
質問:このサイのどこが変?
答え:角(つの)が変
そう、あの立派な天を突くサイの角が2本とも切られているのです。
ネイチャーガイドに訊くと
「サイの角が主にアジアで癌(ガン)を治す秘薬として1本2000万円もの高値で闇取引されていて、
密猟で激減したため、殺して密猟してもお金にならないように角を2,3年に一回切って密猟を防いでいるんだ」
ということでした。
実はサイの角って、人間の爪や髪の毛とほぼ同じ成分で出来ていて、
切ってもまた伸びるので3年ほどで元通りになるそうです。
もちろん爪や髪の毛と同じ成分を食べて、癌(ガン)に効くというのは迷信です。
それでも欲しがる人がいて、なんと日本でも1グラム1万~2万円でネットでも合法販売されています。
サイの角はワシントン条約で1977年から国際取引が禁止されていますが、
それ以前に日本に入ったものは国内取引OKとして合法的に売られているのです。
これは象牙でも同じことで、日本では象牙も堂々と販売されています。
一方、お隣の国、中国は国内での象牙、サイの角を使った商品の製造・取引を2017年に全面的に禁止しました。
ところがこれが2018年10月に一転、中国はサイの角とトラの骨の製品について農場で飼育された場合に限って
医療目的の使用を認めると発表しました。その結果、国際社会からの激しい非難を受けて一月後にはまた一転、
引き続き「3つの厳格禁止」を実行すると発表しました。
ちなみに中国の言う3つの厳格禁止とは、
「製品の輸出入の厳禁」
「製品の販売・買い取り・輸送・持ち歩き・郵送の厳禁」
「医薬利用の厳禁」
を指します。
是非、日本も中国を見習って厳格禁止にしてほしいものです。
また、原産地の南アフリカでは2017年からサイの角の国内取引が合法になり再開されています。
ただし、1977年にワシントン条約で定められた国際取引の禁止は現在も継続中で国外輸出は違法です。
でも、サイの角を2000万円も出して欲しがる南アフリカの現地人は皆無に等しく、
欲しがるのは密輸業者がほとんどだと推測できます。
業者は日本にまず密輸出して、日本国内で合法品に見せかけて販売するのが一番ということになります。
情けないことに、日本がアジアの違法取引の温床になっているのです。
私は、この日本の実態を知って、本当に悲しく、とても恥ずかしい気持ちになりました。
国際取引の解禁についてはこれまでも、サイが生息する国々や野生動物の保護管理者、サイ牧場の所有者、経済専門家、自然保護活動家などの間で激しい議論が行われてきました。
(参考記事:「フォトギャラリー:世界最大の「サイ牧場」を撮影」)
サイが生息するほとんどの国は「サイの角は人間の爪のように伸びてきて2年もすれば元に戻る。また国際取引で得た利益が、サイ保護に役立つ」という理由で国際取引の再開を求めています。
(参考記事:「角の取引合法化でサイを絶滅から救えるか」)
一方、反対派は、取引の合法化によってサイ角の需要が増え、合法な角を隠れ蓑にした違法な角の取引も増えると主張。
どうぶつ基金も同じく反対派です。
また日本も国内取引の厳格禁止を法令化することを求めます。
サイの角や象牙の取引の行方について、今後も目が離せません。
参照と引用
ナショナルジオグラフィック
サイの角の国際取引、解禁案を委員会が否決
ワシントン条約締約国会議、「解禁でサイ保護」の主張を退ける
2016.10.05
サイの角、南アで取引解禁へ 密猟増加の懸念も
禁止措置の継続を求めた政府による上訴が棄却される
2017.04.13
サイ角の国内取引再開、264本を競売へ、南ア
密輸を促すとの懸念、サイトには中国語、ベトナム語も
2017.08.23
※どうぶつ基金の理事が出張手術、講演、視察、取材等の出張をする場合の旅費、宿泊費等は全額個人負担で賄われており財団からの支出はゼロです。
なお、どうぶつ基金の理事は完全無報酬でボランティアとして働いています。
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