ミルクボランティアってなに?
秋には猫の出産シーズンになり、道端で子猫を保護するといった経験をなさった方もいらっしゃるかと存じます。
今日は、東京都動物愛護推進委員で、現在はミルクボランティアとして主に活動をされています墨田由梨さんのお話をお送りいたします。
このメルマガをお読みの方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、ミルクボランティアとは、文字通りミルクを与えて、子犬や子猫を育てる動物ボランティアの事です。特に、最近は猫のミルクボランティアの役割がクローズアップされています。
全国の動物愛護センターに収容され殺処分される犬猫の半数近くは、まだ乳離れしない幼猫です。
成猫とは違って数時間おきに授乳の必要な幼猫を世話するだけの人手が無い動物愛護センターでは、多くの場合、収容されて直ぐに処分されてしまいます。
最近は、そういった幼猫の命を助けるために、自治体が広く一般からミルクボランティアを募集して授乳をしながら育ててもらう活動を民間の力を借りながら行うところも出て来ました。とは言え、愛護センターに運ばれることもなく、人知れず命を落とす幼猫もまだまだ相当数いて、その数は殺処分数の統計にすら反映されないのが実状です。
近年では、飼い猫の完全室内飼いが推奨され、飼い主のいない猫の避妊去勢手術も進み、減少傾向にあるとはいえ、まだまだ助けを求める乳飲み子の子猫の写真が毎日SNS上に投稿され、また愛護センターでも職員の方々が辛い思いを押し殺して幼い命を絶たねばならない状況には変わりはありません。
子猫は生後約1ヶ月の間は母乳だけで育ちます。人工哺乳の場合、猫用の粉ミルクを使いますが、生まれたばかりの頃は一度に飲めるミルクの量に限りがあるので、できるだけ頻繁に授乳する必要があります。
私の場合、生後1週間程度の子猫には、私が起きている間は1〜2時間の間隔で授乳をして、夜中は1〜2回ほど起きて授乳。3時間から4時間くらいは就寝するようにしています。
子猫の成長と共に、徐々に子猫が飲めるミルクの量も多くなるので、それに伴い授乳の間隔も空けることが可能になり、睡眠時間も長く取れるようになります。
生後約1ヶ月頃から歯が生え揃い始めるので、離乳食を与え、徐々にドライフードも食べられるように慣らしていきます。生後2ヶ月を目処に1回目のワクチンを接種。生後2ヵ月半で早期避妊去勢手術とマイクロチップの装着を終え、生後3ヶ月で2回目のワクチン接種を済ませてから、里親さんのご自宅までお届けするというのが、大体の流れです。
ただ、子猫を人工哺乳で育てることは、そう簡単な事ではなく、離乳前後までは下痢をすることも多い上、風邪やその他の感染症などに罹患することもしばしばですので、ただ授乳するだけでなく、体重が確実に増えているか、また健康管理など、細心の注意を払う必要があります。
それ故、身近に幼猫の治療に詳しい獣医さんが居るということもミルクボランティアとして必要条件の一つです。(全ての臨床獣医師が必ずしも幼猫の医療に詳しいとは限りません。)
また下痢をすれば、通院・投薬だけでなく、子猫の身体を清潔に保つために身体を洗いドライヤーでよく乾かす事を繰り返さなければなりませんし、敷物を何度も洗濯しなければならないなど、本当に手が掛かるのが実際のところです。猫の場合、母猫が一度に出産するのは2〜3匹から多ければ5〜6匹ですので、それだけの頭数を同時にケアしながら人工哺乳で育てるのは容易な事ではありません。
それでも私がミルクボランティアを続ける理由は、どんな苦労があってもそれを差し引いても余りある充実感があるからです。
授乳期から人間が育てた子猫は100%人に懐いてくれるので、里親さんがそれは喜んで下さいますし、普段、私たちが目にすることのない幼齢の可愛い子猫の姿を目の当たりにすることは、ミルクボランティアならではの楽しみと言っても良いのではないでしょうか。
もちろん子猫を里親さんに託す際には、一抹の寂しさも有りますが、何より大切に育てた子猫が新しい家族に迎えられ幸せになるのを見届けることの達成感は何にも代え難いものです。
ミルクボランティアをするためには、出来る限り自宅に居て子猫のお世話に時間を費やさなければならないので、専業主婦や自宅で仕事をしている方に限られてしまいます。
しかしながら、成猫の保護のように広いスペースは必要ありませんし、我が家の飼い猫達も子猫に対してはテリトリーを侵害されるといったストレスも無く、毎回、暖かく受け入れてくれるので、既に猫を飼っている方にもお勧め出来るボランティア活動です。
授乳して育てた子猫は、必ず里親さんが見つかり譲渡率は100%です。なによりも殺処分の減少に直接貢献できる事、小さな命をコツコツと救い続ける事で得られる充実感は、言葉では言い表せない程の喜びです。
本来であれば、飼い猫の完全室内飼いが更に徹底され、また飼い主のいない猫の避妊・去勢手術が進むことで望まれない命が生まれることのない社会にしていく事が何よりも大切です。
それでも100グラムにも満たないサイズで生まれてくる子猫達は、運よくこの世に生を受けた小さくとも尊い命です。人に寄り添う事でしか生きて行くことの出来ない猫に恩恵を受けつつ、数千年の長きに亘り猫と共に生きて来た人間としては、全力でその命を守るべきではないでしょうか。
一人でも多くの方がミルクボランティアの活動を知り、ミルクボランティアとしての活動に加わって頂ける事を切に願っております。
多頭飼育崩壊への緊急対応など、いざというときにどうぶつ基金が活動できるのは、皆様のご支援があってこそ可能となります。
毎月のご寄付へすでにご参加いただいているにもかかわらず、再度のご案内となりました場合は失礼をご容赦ください。