63_北海道石狩市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.63
申請日:2023年11月29日
申請/実施責任者:石狩市 環境課
場所:北海道石狩市
居住者:当事者本人(77歳、男、無職※申請時は自営業だったが引退)、配偶者(79歳、女、無職)
居住環境:貸家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:19頭
手術日:12月12日、12月21日、2024年2月27日
協力病院:Mobile VET Office
チケット発行数:19枚
手術頭数:17頭(2頭が手術前に亡くなったため)
協働ボランティア:個人ボランティア
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 10年以上前、当事者の娘がオス猫1頭をごみ捨て場で拾ってきて飼っていた。
- 猫が脱走し、その後、脱走した猫と似ている猫がいるとの情報を受け、探しに行った際、車のドアを開けたら入ってきた猫がいた。実際はメス猫で、脱走した猫とは別だったが飼い始め、まもなく子猫6頭が生まれた。
- 約9年前に札幌市から石狩市へ転入。その頃には、亡くなったりして飼養頭数は3頭になっていた。その後、冬の時期に、餌を与えていた野良猫を可哀想に思い家に入れた。その猫が子猫7頭を産み、徐々に増えたり亡くなったり(共食いもあった)して現在の頭数は19頭である。
- 市福祉部局、包括支援センターからの情報提供と相談があり多頭飼育が発覚。
- 高齢夫婦の二人暮らしで、当事者の妻が2023年6月に骨折し入院。入院費支払いの負担があり、同年7月に生活保護を申請し、妻の入院期間中のみ生活保護を受給していた。同年9月に妻が退院して要介護4となったが、生活保護は廃止となっている。当事者は自営業だったが2023年11月に引退。
- 猫の飼養について夫婦ともに限界を感じていて、生きものの命は大切にしたいので、里親を探し引き取ってもらい、将来的には市営住宅等への転居を考えていきたいという意向を確認し申請に至る。
- 全頭17頭はチケットにて不妊手術済み。2頭は衰弱状態で手術前に亡くなった。1頭がボランティアにより保護。残り16頭は当事者宅で暮らすが、将来市営住宅等へ転居する予定でその際は猫を里親に出す予定。
- 猫たちはこれまで一度も病院にかかったことがなかったが、協力病院により爪切り・耳掃除を行っていただいた。痩せており健康状態が良くないことからボランティアが一時預かりしている猫1頭が2024年2月に猫エイズ陽性と判明。その他の猫は検査未実施。
- 猫は自宅内で好きに動き回っている。トイレのしつけはできていない。当事者が仕事を引退し、猫の世話をする時間的余裕ができたこともあり、近所から分けてもらった魚を煮て与えたりして猫が喜んで食べている。
- 元々清掃はこまめに行っていたものの、自宅内の尿臭が強かった。手術後は尿臭が少し和らいで改善している。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
12月12日 | 1 | 1 | 0 | 2 |
12月21日 | 6 | 7 | 0 | 13 |
2月27日 | 0 | 2 | 0 | 2 |
計 | 7 | 10 | 0 | 17 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
福祉部局(地域包括支援センター)と連携して支援に努め、全頭手術が終わり、これ以上増える心配がなくなったのはよかった。ボランティアがやむを得ず金銭を負担している実態があることは反省点である。(協力病院に手術の予約をする時点で、チケット外の医療行為が必要になった場合の医療費の捻出について懸念があった。ボランティアの寄付金のおかげで、点滴、抗生剤など最低限の診療を得て無事に手術を終えることができた。)また、里親探しが不調であったことは反省点である。
どうぶつ基金スタッフコメント
福祉部局と動物愛護部局が連携して解決にあたるケースは増加しています。福祉部局は当事者の自宅を訪問する機会もあり、いち早く異常な動物の飼育状況を把握することができます。また、多頭飼育崩壊の当事者は福祉の手を必要としていることが多く、そういった面でも福祉部局と動物愛護部局が連携することには大きな意味があります。さらに多くの人と動物を救うため、組織横断的な対応が一般的になることを願います。
本件については、2頭が手術前に亡くなってしまいましたが、残る17頭は全頭手術済みとなりました。ただ、当事者は猫を譲渡する意思を持っており解決は道半ばです。行政やボランティアの方には、今後も里親探しの面で当事者をサポートしていただけたらと思います。