62_福岡県大野城市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.62
申請日:2023年11月7日
申請/実施責任者:大野城市 循環型社会推進課
場所:福岡県大野城市
居住者:当事者本人(62歳、男、会社員)
居住環境:貸家/アパート、集合住宅
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):25頭(6頭)
手術日:11月20日、11月28日、12月12日、2024年1月20日、1月31日
協力病院:cat spot clinic
チケット発行数:17枚(未手術の猫17頭分を申請)
手術頭数:15頭(1頭が行方不明、1頭が手術前に亡くなったため)
協働ボランティア:さくらCAT博多
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 2018年に1頭のメスの子猫を保護し飼養したのがきっかけ。
- 2019年に職場に現れた1頭のオス猫を保護。自宅に連れ帰り室内で飼養していたが、2頭とも不妊手術を受けさせていなかったため、直後にメス猫が妊娠し出産した。この時に子猫5頭が生まれ、うち2頭を譲渡したが子猫3頭は当事者が飼養することとなった。
- さらに知人から子猫の保護依頼があり見捨てることが出来ず受け入れ、2019年時点で6頭の猫を室内飼養していたが全頭、不妊手術を受けさせていなかった。
- 2020年、当事者は大ケガをし医師からは入院治療を勧められたが、自宅に猫がいるため長期間家を空ける事が出来ないと判断し、通院し自宅療養をしていた。当時もほとんどの猫に不妊手術を受けさせていなかったため、繁殖が繰り返され頭数が増え続けたところに、当事者のケガの影響で世話が出来ず、次第に家の中が荒れはじめ、住めないほどのゴミ屋敷となっていった。
- さらに増え続ける猫たちの餌代などで経済的に困窮し、不妊手術費用の捻出も不可能となる。その後も猫は増え続け、2023年10月末時点で27頭になっていた。
- 当事者は猫の頭数が増加していく状況を危惧し、ボランティア団体に相談をもちかけたが(ボランティア団体の協力のもと10頭は不妊手術が実施できたが、ボランティア団体も金銭的な支援はこれ以上は困難であるとのこと)既に当事者やボランティア団体で収拾がつく段階になく、ボランティア団体より大野城市に相談があり多頭飼育が発覚した。
- 当事者へ適切な給餌、不妊手術の実施、室内飼いの徹底、新たな猫(本案件と関係のない猫)に対する餌付けおよび無責任な保護の禁止などの指導を行ったが、大野城市においても猫の問題は深刻な課題と考えており、今回市内において、多頭飼育崩壊が発生し、迅速な対応・処置が必要と判断したため申請に至った。
- 総数27頭として申請したが、当事者もボランティア団体も正確な頭数は把握できておらず、その時点で把握できた未手術の猫17頭分のチケットを申請。1頭が行方不明になり1頭が亡くなったため、チケットを使用して不妊手術済みとなったのは15頭であった。
- 当事者宅へ19頭戻り、3頭は行方不明および死亡。残る4頭はボランティアが保護した(その後1頭が死亡)。
- 当事者が住んでいたアパートは取り壊され、現在は新しいアパートに猫と共に居住しているが、部屋は既に荒れており、猫用のトイレ等の清掃が出来ておらず、糞尿の臭いが充満している状態になっていたため、ボランティア団体が2回清掃を行い、ケージの設置、トイレの増設も行った。今後については、ボランティア団体の保護頭数に空きが出来次第、状態が良く人慣れしている猫から保護・譲渡をしていく予定である。
- また、当事者自身で不妊手術を実施したとされるオス1頭が未手術であったため、当事者の費用負担で手術を実施するか、もしくは2度目の申請を検討している。行方不明となっている猫も発見でき次第、手術を実施する。
- 猫の健康状態は改善傾向にあるが、個体の身体に糞尿の悪臭が取れず、皮膚疾患や風邪症状があり痩せている。
- 今後も行政とボランティア団体で定期的に当事者宅を訪問し指導を行っていく。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
11月20日 | 0 | 2 | 0 | 2 |
11月28日 | 5 | 0 | 0 | 5 |
12月12日 | 4 | 0 | 0 | 4 |
1月20日 | 0 | 1 | 0 | 1 |
1月31日 | 0 | 3 | 0 | 3 |
計 | 9 | 6 | 0 | 15 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
大野城市における初の多頭飼育崩壊の事案であったため、初期対応が滞り、協働ボランティア団体にも負担を強いることとなった点を反省している。
どうぶつ基金に支援いただいたことで、さらなる頭数の増加を防ぐことができ、状況の悪化を免れることができ、将来的に同様の案件発生時に活かせる経験を培うことができた。
どうぶつ基金スタッフコメント
多頭飼育崩壊は「すぐやる・全部やる」が重要で、支援前も支援後も、可能な限り正確に頭数確認を行うことが求められます。また、解決のためには全頭もれなく手術することが重要ですが、本件においては1頭が未手術のまま残っています。この1頭について早急に不妊手術を行うこと、飼育環境の改善について継続して指導を行うこと、譲渡を進めること、これが解決に欠かせない3つのポイントとなります。また、現在の頭数を正確に把握し、頭数の増減がないか第三者の目で確認していただきたいと思います。元の状態に戻さないため、ボランティア団体の協力を得ながら、行政には主導的にご対応いただくことを求めます。
猫が増えていく過程で、当事者に子猫の保護を依頼した知人も大きな責任があると考えています。その結果、当事者に託した子猫は、十分なお世話を受けることもできない地獄のような環境で生きることとなりました。本件に限らず、譲渡希望者に対して非常に厳しい条件を設けながら、ボランティア同士、そして知人同士ではその厳しい条件が置き去りにされることが多々見受けられます。動物愛護に携わる人間として、命を託すにふさわしい相手かどうかをしっかり見極めていただきたいと強く感じました。