20_北海道苫小牧市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.20
申請日:2024年6月18日
申請/実施責任者:苫小牧市 環境生活課
場所:北海道苫小牧市
居住者:当事者本人(85歳、女、無職)
居住環境:貸家/アパート、集合住宅
生活保護の受給状況:受給している
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):30頭前後(0頭)
手術日:7月16日、17日、18日
協力病院:Mobile VET Office
チケット発行数:20枚
手術頭数:20頭
協働ボランティア:NPO法人猫と人を繋ぐツキネコ北海道
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 当初は2頭の猫を室内飼いしていた。
- 当事者宅周辺は野良猫が多い。当事者は窓を常時開放していたため、野良猫が入り込んだり、屋外で妊娠した猫が当事者宅で出産した等によって頭数が増加したと考えられる。
- その後、生活状況が悪化。生活保護担当者が室内を確認したことにより発覚。当事者からは飼い猫が4頭と聞いていたが、見える範囲でも15頭ほど確認できた。
- 申請時点で申請者である環境生活課も生活保護担当課も室内を確認できず。介護担当課が室内で20頭前後を確認したが、奥の寝室に入れてもらうことができておらず正確な頭数が把握できていない。当時者以外が室内に入ると寝室へ逃げる猫もいた。
- 4頭は不妊手術済とのことだったが、当事者は実施した動物病院や時期を答えられなかった。
- 野良猫を室内に入れない、野良猫への給餌の禁止、飼い猫と野良猫の判別を指導。しかし、当事者宅はゴミが散乱して猫の糞尿も放置されており、衛生的な状況ではないことから窓を閉めた状態での生活は困難である。また、当事者の状態から当事者自身が室内のゴミを早急に処分することは難しい。
- 生活保護を受給しているが、計画的に生活費を使うことが難しく、電気、ガス、電話が止められている状況。通院も継続できていない。近い将来、入院や施設入所が検討されているが、猫がいる状態では難しいことから申請に至った。
- 今回配分されたチケットで20頭が手術済みとなったが、申請時に把握できていなかった猫が10頭ほどいるため、2回目の申請を行う予定である。手術済みの猫は全頭ボランティアが保護し、ボランティア団体の施設で給餌、排せつ、適度な運動が行われている。
- 猫は痩せこけて被毛がボサボサ、カリシウイルスに感染している猫や口内炎症状のある猫、室内飼いだったにも関わらず耳ダニがいる猫もいたが、ボランティア団体の協力を得て治療中である。
- 当事者宅はまだ10頭ほど猫がいて清掃が完了していないが、20頭の猫がいなくなったことにより、悪臭は少し改善された。今後の清掃については、残った猫を捕獲後に実施する予定であるが、当事者が7月24日に施設入所したため時期は未定である。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
---|---|---|---|---|
7月16日 | 7 | 10 | 0 | 17 |
7月17日 | 1 | 1 | 0 | 2 |
7月18日 | 0 | 1 | 0 | 1 |
計 | 8 | 12 | 0 | 20 |
【現場写真(支援前)】
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
申請時は15頭前後として20頭で申請していたが、室内には20頭を超える猫が飼育されていた。
申請時に未確認の部屋があり、その部屋には壁に穴が開いていた。この穴からアパート天井裏や浴室下、壁裏に猫が逃げてしまい、正確な頭数把握や円滑な捕獲作業を行えなかった。残った猫は人慣れしていない猫もいることから、早急に捕獲が難しく、本申請では全頭不妊手術を実施することができなかった。
しかし、猫の不妊手術及び保護が決定したため、当事者の施設入所が可能となった。
どうぶつ基金スタッフコメント
行政の報告から、当事者が猫を飼育できる状態でないことは明らかであり、支援と時を同じくして施設へ入所しています。本件については、現在捕獲できていない未手術の猫も含めて全頭保護が決まりました。ボランティア団体のご協力・ご尽力には感謝しかありません。あとは現場に残る猫の手術ですが、難航が予想されます。行政とボランティア団体の皆様には、最後の1頭まで解決に向けてご尽力をお願いしたいところです。また、当事者宅周辺は野良猫も多いとのこと。これを機会に周辺のTNRを実施することを検討いただきたいと思います。
本件のように、当事者が入院したり施設に入所したりして飼育困難となり、現場に多数の犬や猫が取り残されるケースは後を絶ちません。悲惨な状況から保護された犬や猫を見て「保護されてよかった」と感じるのは当然の感情ですが、ボランティア団体はどこもひっ迫しています。殺処分を回避するため懸命に努力している全国の動物愛護センターもひっ迫しています。
多頭飼育崩壊は動物愛護だけの問題ではありません。福祉の問題も大きく関係しています。これほど全国で多発している今、この問題をどのように解決していくのか、国として法改正や新たな施策を打ち出してほしいところです。