1_滋賀県長浜市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.1
申請日:2024年4月1日
申請/実施責任者:長浜市 市民生活部 環境保全課
場所:滋賀県長浜市
居住者:当事者本人(89歳、男、無職)、長男(57歳、運転手)
居住環境:持ち家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数(うち子猫の頭数):30頭(5頭)
手術日:5月10日、6月7日
協力病院:にじのはしスペインクリニック 多賀診療所
チケット発行数:30枚
手術頭数:24頭(衰弱死と行方不明により6頭が未手術となった)
協働ボランティア:多賀にゃん
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
- 10年ほど前に1頭の野良猫を飼い始めてから徐々に頭数が増えていき、5年ほど前から多頭飼育状態である。
- 最初の5年は子猫が生まれても対応できていたが、高齢に伴う体力の低下や配偶者の認知症発症によって、徐々に自力での対応が難しくなった。保健所や市にも相談していたが解決策がなく、5年ほど前から手がつけられない状態となった。
- 同居する長男は長距離トラックの運転手で、生活が不規則・長時間労働のため家のことに関わることができなかった。
- 2023年8月、長寿推進課から「当事者の血圧が230あるが医療受診できていない。家の中は物が散乱しており、猫を飼っているようで獣臭がする。」と連絡あり。
- 包括センターが訪問したところ、多数の猫が2階建ての家の中を自由に行き来していた。餌を与える場所も決まっておらず、猫が家中でした糞尿により汚染された屋内外の状況が明らかとなった。当事者より「猫のことで困っているが、行政に相談に行っても駄目だった」との話あり。
- 当事者夫婦の健康状態の回復および生活の立て直しのため包括センターが支援を開始。しかし、当事者は2023年11月に体調を崩して入院。その後、配偶者が2023年12月に逝去した。
- 室内は空の缶詰やゴミが散らかり、アンモニア臭などの悪臭がしている。猫は汚れており、空気の入れ替えで窓を開けた時に猫が室内外を出入りするため野良猫も混じっている。そのため、当事者は飼い猫が何頭いるのか把握できていない。
- 市も当事者宅を訪問し、近隣住民からの苦情があることを伝え、頭数がこれ以上増えないよう不妊手術を実施するよう指導。しかし、当事者家族の経済状況から手術費用の自己負担は難しく、当事者宅もごみ屋敷の状態である。
- 近隣住民が長年迷惑し悩んでいたことから、今後の改善に向けて不妊手術によって繁殖を防止することで地域の公衆衛生の向上に寄与するものと思われ申請に至った。
- 30頭のうち24頭がチケットにより手術済み。6頭は衰弱死と行方不明で手術できず。
- 手術済み24頭のうち5頭はボランティア団体を通じてすでに譲渡された。当事者と19頭の猫は引き続き同じ場所で暮らし、譲渡先探しを継続する。
- 支援後は野良猫が出入りすることがなくなった。衛生環境も改善が見られ、人も猫もきれいな環境で生活ができるようになった。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
---|---|---|---|---|
5月10日 | 5 | 11 | 0 | 16 |
6月7日 | 6 | 2 | 0 | 8 |
計 | 11 | 13 | 0 | 24 |
【現場写真(支援前)】
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
ボランティア団体から報告がなく、すべての確認ができていない。
どうぶつ基金スタッフコメント
支援は完了し、衰弱死や行方不明になった6頭を除いた24頭全頭が手術済みとなりました。うち5頭はボランティア団体を通じてすでに譲渡されています。支援後は上下運動が可能なケージが設置され、清掃も行われ、飼育環境の改善が見られます。当事者には、残った19頭の猫が健康で快適に過ごせるよう飼い主としての責任を果たしていただきたいと思います。
「行政に相談してもだめだった」これほど重い言葉はありません。多頭飼育崩壊の当事者は、高齢であったり経済的に困窮しているなど社会的弱者が多く、行政の助けを必要としています。そこに目を向けず「飼い主の責任」で片づけてしまうと事態は悪化するだけです。次に同様のことが起こった時どう対応するのか、しっかりと関係各所で連携を取っていただきたいと思います。
また、本件は行政、行政と協働するボランティア団体の連携が取れていませんでした。そのため必要な報告が大幅に遅れました。どうぶつ基金の多頭飼育救済支援はすべて多くの方のご寄付で行われています。利用する行政も、行政と協働するボランティア団体もそのことを忘れないでいただきたいと思います。