27_青森県南部町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.27
申請日:2021年7月20日
申請/実施責任者:南部町 福祉介護課
場所:青森県三戸郡南部町
居住者:当事者本人(43歳、女性、無職)
居住環境:賃貸/アパート
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:7頭
手術日:8月28日
協力病院:八戸のらねこ病院
チケット発行数:7枚
手術頭数:7頭
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 現場は古い公営住宅で生物の飼育は禁止されているが、2年位前に知人から猫2頭(オスメス1頭ずつ)をもらった。
- 当事者には障害があり障害年金で生活している。自立した生活が困難なため福祉サービス、金銭管理支援の利用を勧めるも拒否が続き、外部の人を部屋の中に入れることも拒否していた。
- ようやく通所サービスの利用にごぎつけたものの、2020年9月にサービス事業所から「本人から悪臭がする」「送迎に行った際ネコが出てくる」との報告あり。訪問してみると猫が31頭に増えており、餌も与えられず不衛生で悲惨な状況であった。
- 早急な対応が必要とのことで、2020年11月頃に本人同意のもと動物愛護センターの協力にて全頭捕獲を試みたが、本人の強い拒否行動でオスメス1頭ずつ残した。
- 残したメスが妊娠しており出産し現在の7頭に増えてしまった。ケージにオスメス分けて飼うように再三指導するも分けられていない状況で、また増える可能性大が高いため申請に至る。
- 2021年8月に7頭全頭を手術。1頭は術後にけいれんが見られたが経過は良好である。
- 当事者宅にはメス2頭を戻し、ボランティアが5頭保護して里親探しを行っている。
- 今までは掃除をすることはなく不衛生で強い悪臭があったが、猫を育てるために自分なりに掃除をするなどして臭いも少なくなってきている。
- 以前は餌がなくなることもあったが、現在は餌・水もしっかり与えている。
- 現在は当事者の部屋ではなく同棟の別室で猫を飼育。猫用のスペースができたほか、当事者不在時には同居人が猫をお世話をするなど環境は改善されている。以前は餌がなくなることもあったが、現在は餌・水もしっかり与えられている。
- 猫2頭とともにこのまま同じ場所に住み続けるため、住宅担当課やサービス事業等とも連携し、助言・見守りしながら適正飼育が続けられるようにしていく。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
8月28日 | 3 | 4 | 0 | 7 |
計 | 3 | 4 | 0 | 7 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
捕獲の当日までに3カ月ほど時間をかけ、関係者間で何度も説明をして同意を得ていたが、当日に7頭中4頭を引き取ると言い出して興奮状態となってしまい、当事者本人の傾聴説得に時間を要した。ようやく理解してもらうことができ、最後は当事者もボランティアさんを手伝っていた。ボランティアさんの優しい対応で当事者本人も安心したようである。
今回はボランティアさんや多数の協力者のお世話になったことで、当事者も責任をもって飼うということを少しずつ理解しているようだが、知的障害者への関わりの難しさを再確認した。
どうぶつ基金スタッフコメント
当事者には障害があり、行政の報告書を読む限りでは、周囲のサポートがなければ動物の適正飼育は難しいでしょう。最初に当事者へ猫2頭(オスメス1頭ずつ)を譲り渡した知人の責任は重いです。当事者の飼育能力をきちんと見極めたうえで譲り渡したのでしょうか…疑問が残ります。
そして、2020年11月頃に全頭捕獲を試みた動物愛護センターが、当事者の手元に猫2頭(これもオスメス1頭ずつ)を残した判断は正しかったでしょうか。動物愛護センターに捕獲された29頭の猫がどうなったかは書かれていませんが、推しはかることはできます。それでも解決せず今回の多頭飼育救済申請に至りました。
このように猫を引き取るだけでは多頭飼育問題は解決しません。今回のケースは、行政がボランティア団体等と協力して粘り強く当事者を説得し、全頭に不妊手術を行ったことで解決を見ました。現場に戻った2頭の猫は、同居人のサポートを受けながら当事者が飼育を継続します。2頭の猫と当事者が穏やかに暮らしていくには、これからも行政やボランティア団体、周囲の方の見守りが必要でしょう。