51_宮崎県高千穂町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.51
申請日:2021年11月2日
申請/実施責任者:高千穂町 町民生活課
場所:宮崎県西臼杵郡高千穂町
居住者:当事者本人(男、77歳、無職)、妻(女、79歳、無職)
居住環境:借家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:22頭(当初23頭で申請)
手術日:2022年12月9日、12月14日
協力病院:どうぶつ基金病院(宮崎)
チケット発行数:20枚(幼齢により手術不可の3頭を除いた20頭分を申請)
手術頭数:19頭(頭数の数え誤りがあり未手術の猫は19頭だった)
協働ボランティア:宮崎ねこの会
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 12年程前に餌を与えて飼っていた野良猫1頭(メス)が屋根裏で子猫を産み、飼い始めて6年程経過した時には26頭ほどになっていた。
- 多頭飼育状態に陥るまでは外飼いしており、近隣の猫と交配し妊娠・出産を繰り返していた。家の隙間から猫が入ってくることもあり、頭数が増加していった。
- 当事者がよく利用するお店から高千穂保健所に悪臭の相談があり、保健所の担当者が当事者宅を訪問。また、担当のケアマネージャーへ当事者本人が相談し、担当ケアマネージャーが日南町役場に相談したことにより発覚。
- 当事者は肝臓がんを患っており、その妻も精神疾患の病歴がある。がん治療のため県外の病院で治療を試みるも10日間の検査入院が必要と言われ、妻および猫が心配になり断っている。
- 当事者の妻は夫に先立たれてしまった際に、1人でこれだけの数の猫の面倒を見ることができるか不安に感じている。当事者は不妊手術による頭数抑制が必要なことは理解しているが、病気による体調不良や経済的理由により進んでいない。これらのことから他関連部署と協議を行い、申請を決定した。
- 今回の支援により未手術の猫19頭に不妊手術を実施、うち3頭は妊娠していた。幼齢のため手術対象外となった子猫3頭は11月中旬に譲渡済みである。
- 手術を終えた19頭はこのまま同じ場所に住み続けるが、譲渡に向けた取り組みも今後行っていく予定。
- 手術後も定期的に当事者宅に訪問し観察しているが、特に健康状態が悪くなった猫は確認できていない。ストレスも特にないように思われる。
- ここ数年は完全室内飼いであったため、床に毛が散乱して汚れも目立っていたが、清掃活動により衛生的になった。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
12月9日 | 11 | 4 | 0 | 15 |
12月14日 | 2 | 2 | 0 | 4 |
計 | 13 | 6 | 0 | 19 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
初めての取り組みであったため戸惑うことも多かったが、関係機関(保健所、福祉部局)および協働ボランティアと連携し、無事当事者宅のすべての猫に不妊去勢手術を行うことができた。手術後もトラブルなく、また清掃実施後の衛生的な空間で飼い主と猫達が元気に過ごしている姿を見ることができ、安堵しているところである。今後も譲渡に向けた取り組みを行い、行政サポートを行っていく。
どうぶつ基金スタッフコメント
行政内の部署連携や民間との協働体制など、多頭飼育救済支援のお手本となるようなケースだと感じました。
不妊手術の重要性は理解していても経済的な事情もあって実施できない、そんな中で当事者夫妻はそれぞれに病を抱え、猫の行く末を気にかけながらの暮らしであったことでしょう。
幼齢であった3頭はすでに譲渡され、残りの19頭は不妊手術を終えました。これ以上、猫が増えることはありません。これまで治療に専念できなかった当事者には、しっかりと治療をして元気を取り戻し、家族と猫とともに穏やかな暮らしを取り戻してほしいと思います。
多頭飼育問題を解決するには、猫だけでもだめ、人だけでもだめ、その両方を救う手立てが必要です。どうぶつ基金の多頭飼育救済支援はその手立ての1つ。多くの行政に利用していただきたいと考えています。