56_福岡県広川町多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.56
申請日:2021年11月4日
申請/実施責任者:広川町 環境衛生課
場所:福岡県八女郡広川町
居住者:当事者本人(女、63歳)
居住環境:借家/一戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:40頭(申請時は26頭と申告)
手術日:2021年12月8日
協力病院:どうぶつ基金病院(福岡)
チケット発行数:22枚(申請時に把握していた未手術の猫22頭分を申請)
手術頭数:22頭
協働ボランティア名:黄色い猫じゃら
申請から不妊手術完了までの経緯(行政報告書より)
- 11年前、飼い猫だった猫が捨てられていたのを保護したことをきっかけに3頭の猫を飼育。
- 不妊手術を行っていなかったため、近所の野良猫と交配して出産。その子猫の面倒もみるようになり4、5年前から増え始めた。
- 譲渡会に参加して子猫を譲渡するなど増えすぎた猫の対策を行ってきたが、近所で野良猫や可哀想な猫を見るとつい面倒をみてしまい、どんどん頭数が増えていった。
- 猫は室外飼育で、庭の草が生い茂って糞尿がどこにあるかも分からない状況。また、餌の缶詰め等が室内外に散らかり病気も猫も多かった。
- お世話をしているのは自分であるという責任感からできる範囲で不妊手術を行ってきたが、手術代を負担できなくなり現在に至る。3頭の猫から始まって約9年で多頭飼育崩壊に陥った。
- 近隣住民やボランティア団体から区長に情報提供があり発覚。経済的な事情等を考え、自力による課題解決は困難であると判断し申請に至る。
- 当初は26頭と申請していたが、実際には40頭だった。そのうち9頭が手術済み、チケットによる手術を受けた猫が22頭、譲渡された猫が5頭、譲渡予定の猫(子猫)が3頭で39頭。1頭が未手術となったが、この1頭については当事者にて今後手術を実施する。
- 手術済み31頭と未手術1頭の計32頭が当事者宅に戻り、当事者が飼育を継続する。
- 支援後、猫は完全室内飼いとなり室内にトイレを設置。猫が遊べる器具も提供され、運動スペースも確保できる広さでの飼育に変わった。現場周囲の糞尿の掃除や草刈りも行われ、室内外のゴミも以前と比較すると片づけが進んでいる。
- ボランティアから薬の提供や治療のアドバイスがあり、それぞれの猫の状態を当事者も把握することができ、猫の状態が大変良くなったと感じている。
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
12月8日 | 11 | 11 | 0 | 22 |
計 | 11 | 11 | 0 | 22 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(行政報告書より)
約1か月半のわずかな時間で、当事者のためにも、猫ちゃんのためにも、ご近所の人のためにも、飼育状況が大きく改善されたと感じております。
職員視点でいうと「どこから手を付けてよいのか」と感じるほど困難な状態であり、飼育環境の改善にかなりの時間を有すると想像していました。飼育環境の改善には本人の努力と協力が不可欠であるため、飼育の指導・助言を行っていく前の信頼関係づくり、また、改善に向けた大きな1歩として、どうぶつ基金の多頭飼育救済支援の実施を考えておりました。
しかし、支援の実施に伴ってボランティア団体の協力を得ることができ、飼育環境の改善が一気に進んで理想の形というほどまでに改善されました。
今回のビフォーアフターは、協働ボランティアの存在なしには実現できないことであり、大きな飼育環境の改善の実現には、そのような方々の経験や知識、人柄が必要であることを感じました。
反省点としては、ボランティアと当事者で協力しながら進めていただくなかで、ボランティアの気持ちやスピードに当事者がついていけない部分やお互いに理解し合えずに進んでいる部分があったことが挙げられます。
今回の支援を機に飼育環境が改善され、当事者に万が一のことがあった時の対応についてまで話し合うことができたのは良かったと思います。
今回、どうぶつ基金を含め多くの人に協力していただきました。当事者にもその部分を伝え、理解してもらえたと感じています。適正な飼育環境の継続が次のステップになりますが、当事者の今後の努力に期待したいと思います。
どうぶつ基金スタッフコメント
行政の報告書にもあるように、人にも猫にもベストに近い状態で解決に至ったと感じます。
解決に向けて当事者の気持ちも慮って尽力された行政、捕獲や運搬のみならず飼育環境の改善やアドバイスなど多方面で協力したボランティア団体、そして猫たちのためにあきらめず解決に向けて努力した当事者、それぞれが力を合わせた結果です。
「可哀想な猫を何とかしてあげたい」という気持ちはよく分かります。しかし、人が十分にお世話できる猫の頭数は限られています。猫を適正な環境で飼うには、スペースも時間もお金も必要なのです。その範囲を超えて飼うことは、結果的に猫を苦しめることになります。当事者には今一度、そのことを考えてほしいと思います。
改善された飼育環境の維持とともに、これ以上、当事者が新たな猫を増やすことのないよう、定期的な訪問など継続して関わっていくことが必要です。