20_鹿児島県鹿児島市多頭飼育救済支援レポート(行政枠)
申請No.20
申請日:2022年7月28日
申請/実施責任者:鹿児島市 生活衛生課
場所:鹿児島県鹿児島市
居住者:当事者本人(46歳、女、パート)、配偶者(48歳、男、無職)、息子(3歳)、当事者父(82歳、無職)、当事者母(74歳、無職)
居住環境:持ち家/戸建て
生活保護の受給状況:受給していない
多頭飼育現場の猫の総数:49頭(申請時は32頭。申請後に17頭の子猫が生まれ最終的に49頭となった)
手術日:8月5日、16日
協力病院:ル・オーナペットクリニック
チケット発行数:30枚(申請時の総数32頭のうち2頭は当事者負担で手術を行うため30頭分を発行)
手術頭数:30頭
協働ボランティア:NPO法人犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島
申請から不妊手術完了までの経緯(報告書より)
-
- 2016年4月頃、当事者は熊本県に居住。熊本地震で被災した際にメスの野良猫1頭を保護した。
- 保護した時点でその猫は既に妊娠しており自宅内で出産。その後も不妊手術をしないまま、親子兄弟で交配が続き30頭程度に増えた。
- その後、当事者一家は猫を連れて鹿児島市内に転居。
- 現場には32頭の猫がおり、生まれた子猫はSNSを通じて随時譲渡している。
- 近隣住民から「猫を多頭飼育している家があり、悪臭が発生している」との相談を受けて当事者宅を訪問。多頭飼育状態であることが発覚した。
- 現在、当事者家族は当事者方の父母と同居しているが、生計は別であり父母の援助は受けられない。また、配偶者が失業中で当事者のパート収入のみで一家3人の生活費を賄っていることから、全頭の不妊手術を行うことは困難と判断し申請に至る。
- 当初、当事者負担による手術予定2頭+チケットによる手術予定30頭=総数32頭で申請。しかし、申請後に子猫が17頭生まれてしまい最終的に現場の猫の総数は49頭となった。子猫17頭を除く32頭は予定通り手術済みである。
- 支援時にアンモニア臭が染みついた布団や段ボールなどを廃棄し、壁や床、家具等に除菌消臭スプレーを噴霧するなどしたため室内の臭いが軽減された。
- 猫のマーキング行為も軽減し、片付け・清掃を行ったことで飼育スペースも広くなった。
- 49頭の猫は完全室内飼育で、今後も当事者が飼養を継続する。生まれた子猫17頭については、可能な限り譲渡を進めることとし、手術可能な月齢になり次第、2度目のチケット申請を行う予定である。
※鹿児島市2回目のレポートはこちら
手術日 | オス | メス | 耳カットのみ | 計 |
8月5日 8月16日 |
12 | 18 | 0 | 30 |
計 | 12 | 18 | 0 | 30 |
今回の取り組みを振り返り、改善すべき点や今後の配慮事項(報告書より)
経済状況から、当事者自身で全頭の不妊手術を行うことは困難であったが、どうぶつ基金の支援を受けられたことで、探知から比較的短期間で申請分全頭の手術を行うことができた。
しかし、申請からチケット発行までの間に複数の雌猫が出産したことにくわえ、チケット発行後にも妊娠を把握できていなかった雌猫が出産したことにより、子猫が17頭も増える結果となってしまった。子猫については、行政ホームページへの掲載等により里親探しを支援していくとともに、手術可能な月齢になり次第、追加のチケット申請を行い、手術完了まで引き続きサポートを行う予定である。
どうぶつ基金スタッフコメント
最初に保護した猫の妊娠に気付かなかったことはともかく、1度目の出産後に不妊手術をしておけばこのような事態にはなりませんでした。
子猫が産まれるたびに譲渡していたとのことですが、当事者には譲渡する側としての責任も伴います。知人やSNSを通じて猫を譲り受けたことをきっかけに多頭飼育崩壊に陥る事例は数えきれません。不妊手術の重要性を理解していない当事者が行った安易な猫の譲渡が、次の悲しい事態を招いていないことを願います。
当事者が猫を飼育するきっかけとなったのは、熊本地震で被災した際に保護した1頭の野良猫でした。その猫がかつては飼い猫であったのかどうかは分かりませんが、災害で被害を受けるのは人間だけではありません。日本では、特に災害時において動物の命は軽視されがちです。飼い犬や飼い猫の同行避難はもちろんですが、飼い主のいない猫や飼い主を失った犬猫を守る手段も国としても考えてほしいですね。
※追記
子猫17頭の追加申請がないことから12月に現状を確認。子猫のほとんどが育たず、確認時点で子猫は3頭になっていた。子猫たちの発育が良くないため、助言を行いながら見守りをしており、手術時期については獣医師と相談しながら様子を見るとのこと。