プレスリリース 島根県出雲市多頭飼育崩壊(救済)③

朗報!犬182頭飼育崩壊 譲渡先すべて決まる

全国から里親希望 全ての犬の譲渡先が決定 30年の虐待飼育にピリオド。

出雲市の民家で8畳2間に182頭(最多時)の犬が虐待飼育され多頭飼育崩壊を起こしていた問題で、出雲保健所での譲渡会など新たな飼い主探しによって12月1日までに全頭の引き受け先が決まりました(死亡した犬を除く)。
30年以上続いた虐待飼育で、生気を失い病に冒され、痩せ細り、糞を食べるなどして生き延びた犬たちは、2週間で引き受け先が決まり、全国の家庭や団体等に迎えられることになりました。
  ガラスのなくなった玄関扉から顔を出す犬達これまで、ゴミや糞尿まみれの臭い部屋に181頭の犬と人間が暮らしてきました。病気やケガを治療してもらえず放置された犬、エサにありつけず糞を食べる犬、指や耳を食いちぎられた犬、隠れておびえる犬、何代にもわたる近親交配で奇形の犬…。30年以上続いた虐待飼育にピリオドが打たれることになりました。​

   現場の様子youtube

島根県出雲市の民家、8畳2間に182頭の犬がすし詰め状態で虐待飼育されていた問題は、今年10月19日に現場を視察したどうぶつ基金のプレスリリースによって世間に知られることになりました。
これをきっかけに、全頭を保健所で一旦保護し、不妊手術、傷病治療、寄生虫駆除、ワクチン投与、ノミ駆除等の獣医療をどうぶつ基金が無償提供し(※狂犬病予防接種のみ一頭当たり1000円を飼い主が負担)を行い、出雲保健所での譲渡会など新たな飼い主探しによって12月1日までに全頭の引き受け先が決まりました。

虐待現場から全ての犬が搬出された虐待現場から全ての犬が搬出された

現場では30年間、虐待行為が続いており、そのせいで犬ばかりでなく、近隣住民も鳴き声や糞尿臭に悩まされ、多大な被害を被ってきました。近隣住民らは幾度も島根県行政に苦情を訴えてきました。

※7月と11月に近隣住民が県に提出した陳情書の全文を下記に掲載しています。
https://www.doubutukikin.or.jp/activitynews/neighbor_izumo/

充分な食事が与えられず激やせで皮膚病に感染していた  充分な食事が与えられず激やせで皮膚病に感染していた

約80人の署名にようやく重い腰を上げた保健所と警察による立ち入り調査が行われましたが、
立ち入り調査後、出雲保健所の行政獣医師は「飼育状態から虐待とはみなされず、 又、緊急的な措置が必要な状況でもない」近隣住民に回答しています。
(2020年11月2日 近隣住民より島根県に提出された要望書より抜粋)

今年の7月、この現場に立ち入り調査をした警察と獣医師が、「飼育状態から虐待とはみなされず、又、緊急的な措置が必要な状況でもない」と判断したことは本年 6 月に施行された改正動物愛護法に照らした場合、到底正しい判断とは言えません。

   動画 獣医による現地視察

どうぶつ基金では10月19日の視察時から再三にわたり島根県に通報を続けましたが、島根県行政は最後まで「虐待と判断していない」という回答を続けました。手術最終日11月12日、県からの要請に応じて、どうぶつ基金から犬達の衰弱を示す診断結果を提出しました。翌日の定例記者会見で県知事はこれまでの回答を覆して本件が虐待に相当すると回答しました。

​手術日までの間、全国から寄付で集まったドッグフードを与え、ずいぶん体重は増えました。それでも、ほとんどの犬は正常体重より痩せており、写真のように激やせで皮膚病(感染症)やケンカで指を食いちぎられた犬もいました。

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動物愛護法 44条
愛護動物に対し、みだりに身体に外傷を生ずるおそれのある暴行を加える、またはそのおそれのある行為をさせる、えさや水を与えずに酷使する等により衰弱させるなど虐待を行った者→1年以下懲役、100万円以下の罰金
動物愛護法 41条
獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない。
刑事訴訟法239条
官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
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全国からボランティアや獣医師が集まり島根県行政獣医の協力を得て不妊手術、ワクチン投与、ノミ駆除、寄生虫駆虫薬投与、傷病治療等の獣医療が施されました。11月9日から13日の5日間に事業参加した延べ人数は145人になりました。行政が施設を提供し、全国からボランティアが手弁当で駆け付け、すべての人たちが自主的に自分ができる仕事を懸命にこなして事業は完了しました。

多くのメディアに取り上げていただいたおかげで2週間ほどで全頭の引き受け先が決まりました。事業に協力していただいた島根県行政の皆様、獣医さん、ボランティアさん、里親や一時預かり先として手を差し伸べていただいた皆様に心より感謝申し上げます。

フードに薬を混ぜて与える行政獣医とボランティア  フードに薬を混ぜて与える行政獣医とボランティア

こうして不妊手術や獣医療が無料で行われ、行政やボランティア達が必死に救出活動や里親探しを行っている間、飼い主はどのように考えていたのでしょうか? 以下は周辺住民の皆さんと飼い主のやりとりです。

~「これまで⾧年に亘り、何事もなく犬を飼育してきた。最近引越してきた人たちだけが文句を言っているのではないか。自分達は犬を手放すつもりはないので、犬の譲渡の為に一銭たりとも金銭的な負担をするつもりはない」「犬の飼育にあたり、何も困っていることない」ともおっしゃって おりました。
多頭飼育崩壊により犬に悲痛な思いをさせているとの思いや周辺住民に迷惑をかけているとの認識は持っておられないと感じました。~
(近隣住民から県への質問状より抜粋)

飼い主に対する嫌がらせやいじめ行為などは論外ですが、11月13日(金)の定例記者会見の中で県知事が(刑事罰の対象である)「虐待」があったと明言していることを踏まえると、行政及び司法は改めて事実確認をしたうえで飼い主の責任を追及すべきだと考えます。

※どうぶつ基金では、行政に飼い主の生活状況を報告し生活支援をお願いしました。

これまで行政は「飼い主のいる犬や猫のために税金を投入できない」、行政にできるのは「飼い主から有料で引き取り犬や猫を殺処分をするだけ」と、犬や猫に不妊手術をして里親を探し生きさせるという選択を拒否してきました。飼い主は、保健所に相談すれば殺処分されると考えて相談できず犬や猫はさらに増え続ける…という悪循環が繰り返されてきました。

しかし、全国で発生する多頭飼育崩壊のあまりの多さに、ついに環境省は今年10月15日、自治体向けガイドラインの骨子案を有識者検討会に示しました。そのなかで、動物愛護部局だけではなく社会福祉部局とも連携し、動物と飼い主を同時に支援するよう促しています。
動物愛護部局は動物の引き取りや不妊手術などを手配し、社会福祉部局は精神科医や地域包括支援センターなどと連携して飼い主を支援するということです。
多頭飼育崩壊の犬や猫は人間の被害者です。被害者が殺処分されることは許されません。
今回の救済事業が、今後の良きケーススタディとなることを願っています。

【公益財団法人どうぶつ基金とは】
どうぶつ基金は全国の行政・ボランティアとともに犬猫の殺処分0を目指し、様々な活動を行っております。

どうぶつ基金には全国から救済申し込みが届きます。
その一つ一つに最後の望みが託されています。
とても悔しいけれど、すべての声に応えるにはどうぶつ基金はまだまだ力不足です。
https://www.doubutukikin.or.jp/inuhoukai/

殺処分ゼロで、人と犬や猫が笑顔で暮らせる日まで、ご支援をよろしくお願いいたします。

公益財団法人どうぶつ基金
理事長 佐上邦久(さがみくにひさ)

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